<南風>しまんちゅ、それが沖縄の宝


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 年末、にわか探偵役を買って出た。外資系ホテルに勤める知り合いが、約1年前に那覇空港に降り立った日、出迎えた不動産会社の営業マンに数件住居を案内された後、車の往来の激しい道端に置き去りにされたという。

 全く土地勘のない彼女。勤務先に着任あいさつに向かうにも手には重い荷物が二つ。タクシーを拾いかけた時、近くのバス停にいたインド人家族が救いの手を差し伸べてくれた。それが沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究員とその家族で、路面バスに同乗し、道案内してくれたらしい。

 暮れにその友人が同僚とOISTに見学に来ることになり、家族を見つけ出した私は、両者の再会にこぎつけた。インド出身の彼は「ここでは誰もが困っている人を助けるでしょ。同じことをしただけです」とほほ笑んでいた。

 沖縄を訪れる観光客が口にする魅力の一つがその温かい「人」だ。歴史の苦難に翻弄(ほんろう)され、辛酸をなめてきた沖縄の人々。なぜこうも優しく、人に親切にできるのか。思えば米国大学院時代、私のような留学生に対してとりわけ温かく接してくれたのは、やはり何らかの苦労を背負い、社会の不条理に向き合ってきた女性やマイノリティー(社会的少数者)だった。

 OISTには現在900人近い教職員・学生が在籍する。その内、約半数が世界の50を超える国と地域の出身だ。彼らの学生・研究生活も、沖縄の方々の親切心抜きでは語れない。新年を迎え、OIST学長が交代した。記者会見で初代学長のドーファンが5年前の創立以降の思い出を聞かれて口にしたのも、行く先々で出会った島の人々のホスピタリティーだった。

 今年でしまんちゅ生活丸10年。私が感じる沖縄の宝、課題、そして世界への思いを今後半年間にわたって本コラムで述べていきたい。
(名取薫、沖縄科学技術大学院大学広報メディアセクションリーダー)