<南風>睡魔に打ち勝つ仕事


社会
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 私は、ニーブヤーである。寝不足だと、いつも以上にがさつになり、人に優しくなれないという始末。普段、たっぷり寝るよう心掛けているが、睡魔に打ち勝つほど没頭できる仕事がある。それは、番組の編集作業だ。

 4年前の夏、私は1週間ほど編集室で夜を明かしていた。手掛けていたのは、障害を理由にした差別をなくすための条例づくりに奔走する県自立生活センター・イルカ代表の長位鈴子さんを6年間追った番組。無関心な社会に一石を投じるため、長位さんは持ち前のユーモアで仲間を勇気づけながら力の限りを尽くしていた。

 さまざまな壁を乗り越え、迎えた条例成立の日の朝―。真剣な表情で鏡に向かう長位さん、見ると、まぶたの上に大きな目を描く、いわゆる“レディガガメイク”の最中だった。私は思わず吹き出してしまったが、次の瞬間、長位さんが奇異に映るのではないかと不安が胸をかすめた。理由を尋ねると、長位さんは言った。「施設や病院にいて、条例成立の瞬間に立ち会えない仲間の分まで、しっかりとこの目で見届けたい」と。胸が熱くなった。

 どうすれば、この思いを伝えることができるのか、時系列で編集してみても何かが違う。格闘すること1週間、プロデューサーの提案で、長位さんが県議会を目指し、公道を車いすで進むシーンを先に見せてから、時間をさかのぼり、メイクシーンをつないだ。すると、道行く人から向けられる好奇な目を気にせず進む、凛(りん)とした姿から彼女の覚悟、生きざまが伝わり、そこにメイクに込めた仲間への思いが重なる…。これだ!と小躍りした。

 その達成感を味わった直後、ニーブヤーの私が深い眠りに落ちたことは言うまでもない。勝負時に睡魔に負けないよう、たっぷりと寝だめしておこう。
(平良いずみ、沖縄テレビアナウンサー)