<南風>持続可能な観光県を目指して


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 地球上の海域の1%にも満たないサンゴ礁は、全海洋生物の4分の1を育む、海のゆりかごだ。世界有数のサンゴ礁を誇る沖縄の海には、全サンゴの3割にあたる約400種が生息する。

 沖縄科学技術大学院大学(OIST)では教育の一環として、学生たちが専門知識を基に自ら立案するプロジェクトに挑む。あるグループは、豪州発の市民参加型プログラム「コーラルウォッチ」を通して、2015年3月からの10カ月間、人間活動がサンゴ礁に与える影響を調査した。

 調査地はOISTを抱える恩納村の真栄田岬と万座毛、万座、そして本部町瀬底の4カ所だ。毎月1回週末の午前中、海にいる人数を陸上から数え、目的が何か、個人か団体かを記録した。水中では海水温を測り、サンゴの健康状態を色で識別、定点観測を続けた。

 国連環境計画は、自然のままのサンゴ礁を保つ入域制限を1年で6千人としているが、4カ所の内、常ににぎわう真栄田岬では、ダイビングかシュノーケル目的の人が計5千人を超える日もあったという。インストラクター不在で、足に着用するフィンなどでサンゴが傷付くことを自覚していないと見られる人が半数を占めたらしい。

 数年前に訪れたハワイ・ホノルルのハナウマ湾自然保護区は、1980年代に魚の乱獲と観光ブームで海が荒れた。条例成立後の今では、魚の餌付けが禁止となり、海の休息のため週1日は閉湾、入湾前には800円ほどの入場料を払って短い教育ビデオを視聴する。海の生き物を傷付けまいという気持ちになる。

 OISTの学生いわく、夏になると海の危険な生き物を紹介するポスターが出回るが、人間も有害となることを周知すべきではないか。観光客数1千万人を目指す沖縄は、その最たる資源とも言える海を守るための課題が残る。
(名取薫、沖縄科学技術大学院大学広報メディアセクションリーダー)