<南風>声が届ける心の種


社会
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 入学式に入社式、この時期、取材先から届くフレッシュマンたちの声を聞くのが好きだ。その希望に満ちあふれた声を聞いて思い返すのが“初志”だ。

 今回は、私がアナウンサーを志したきっかけ、初志について書かせていただくことにする。

 「あなたの声を聞くと元気になりますよ」。小学3年生の時の担任の先生にかけていただいた言葉。この一言が私の背中を押し、ここまで導いてくれた。

 小学校低学年にして、低い声がコンプレックスだった私は、周囲の友人たちがジャニーズのアイドルに熱を上げ、黄色い声援を送っているのを羨(うらや)ましく見ながら、ドスの利いた私の声では無理!と、アイドルのファンになることを諦めたほどだった。(ちなみに、私は、大河ドラマの中の渡辺謙さんに首ったけだった)

 それが、恩師の一言で、自分の声を好きになることができ、6年生の時には劇のナレーターに志願。声で表現することの面白さを知ったのだった。

 こう振り返ってみて改めて思うのは、恩師や親がかけてくれる言葉は心の種で、その種を心に届けるのが「声」だということ。植物の種が風に乗って運ばれるように、言葉という心の種は、声にのせて思いと共に届けられる。声って素敵(すてき)だ。

 その声を磨くために、アナウンサーになりたての頃、発声・滑舌練習は毎日欠かすまいと誓いを立てた。ただ、目下、子育てに追われる日々。どうにかこうにか見つけたのが通勤する車の中での時間だ。「アイウエオ」と発声しながら運転しているとテンションが上がり、気づけばアォ!と叫ぶことも。

 という訳で、皆さま、街なかで大口を開けて運転している姿をみかけても、初志を貫徹するためですので、見て見ぬふりをしてやってください。
(平良いずみ、沖縄テレビアナウンサー)