<南風>多様な学びの道の創造


社会
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 昨年1月のことです。「宜野湾高校通信制3年生が、私の主張コンクールで文部科学大臣賞を受賞」の記事に小躍りしました。今年3月は「71歳の卒業生」のニュースに胸が熱くなりました。気が付けば、通信制学校の話題や生徒の活躍となると身を乗り出してしまうのが、私の習性になっています。

 沖縄県教育委員長2年目の平成22(2010)年のことでした。高P連総会の挨拶(あいさつ)の舞台から降りた私のもとへ、宜野湾高校PTA役員が駆け寄ってきました。通信制の導入に反対する署名を1万人集めたとのお話でした。私たち委員はすぐに学校を訪問し、校長や担当の先生方、PTAの役員との意見交換を行いました。「今この場で通信制はつくらないと約束してほしい」との発言があるなか、推進の背景や目的を伝え、反対の理由を聞き、意見の整理をしながら、施設の整備や運用面の提案を行いました。ヘロヘロになるほどの会議でした。その後学校とPTAの話し合いが進み、予定より1年遅れましたが、平成24年に宜野湾高校に通信制が開校しました。何より必要だったのは、情報共有と議論を尽くすことだったのです。

 県内には陸路で高校へ行けない離島が23島あります。また経済的な理由や途中の寄り道によって高等教育を受けることが難しい子どもたちが増えています。離島のICTインフラの整備や給付型奨学金の創設にむけては、先日、国が支援を打ち出し、県や市町村・企業の支援も始まっていますが、充分ではありません。次代の人財の育成には、産官学民、地域社会などの多様な方々の連携と多様な学びの道を創ることが必要です。特に現場にいて思うのは、心のつながりと愛情の重要性です。今こそ、私たちのDNAにあるチムグクルを発揮し、力を合わせることが求められているのではないでしょうか。
(開(比嘉)梨香、カルティベイト社長 沖縄海邦銀行社外取締役 元沖縄県教育委員長)