久しぶりの節水呼びかけに戸惑う県民もいるだろう。暮らしを守るため、節水の工夫を思い出し、実践する時だ。
沖縄本島地方で少雨傾向が続き、本島内にある11のダムの貯水率が著しく低下していることから、沖縄総合事務局、県、沖縄気象台などでつくる沖縄渇水対策連絡協議会(渇水協)は16日の臨時会で、一般家庭などに向けて節水を呼びかけることを決めた。
渇水協が節水の広報をするのは2018年6月以来、5年7カ月ぶりである。17日午前0時現在のダム貯水率は58.4%で、平年値79.2%を大きく下回っている。現在の11ダムになって以降、過去最低となった。少雨傾向が続けば、水事情はさらに深刻な事態となる。県民の節水努力が求められている。
渇水協が事務局を置く総合事務局はホームページで入浴時にシャワーの栓を小まめに閉めることや、洗濯物をまとめ洗いして回数を減らすことなど、日常生活の中でできる節水の方法を紹介している。
節水の工夫は、県民生活の中でかなり浸透していた。沖縄本島で最後に給水制限(断水)が実施されたのは1994年1月下旬から3月1日までの夜間8時間断水である。それまではダムの水位が下がれば節水を心がけ、給水制限が実施されればバケツに水をためたり、浴槽の水を洗濯や水洗トイレで再利用したりするなど各家庭で自衛策をとったのである。
ダムの整備や海水淡水化施設の稼働もあり、幸いにも約30年間、給水制限が実施されることはなかった。
今回、少雨傾向による水不足に直面している。県民の記憶から薄れつつある節水の工夫を取り戻す必要がある。県民の関心を高めるための効果的な広報活動も必要だ。最後の断水があった30年前と比較して、情報通信手段は飛躍的に発達した。SNSなどを活用し、さまざまな情報発信が可能なはずだ。
渇水協の試算によると沖縄本島の人口134万人が、1日当たりの水使用量225リットル(那覇市の場合)の1割に当たる22.5リットルを節水した場合、年間で県庁舎約36個分の量の節水効果があるという。日々の暮らしの場で大きな水がめを設けるようなものである。
今後は家庭だけでなく役所など人の出入りが多い公共施設、ホテルをはじめ観光施設など水道の大口需要者も節水の議論を始めてほしい。
今回のダム貯水率の低下は県企業局が有機フッ素化合物(PFAS)対策として中部水源からの取水を停止し、ダムからの取水量が増えていることも影響している。県民の不安を考慮し、県企業局は海水淡水化センターを最大稼働することで、可能な限り取水再開を回避する方針だ。
中部水源からの取水を避けるためにも、不断の県民の節水努力が求められる。それは県民生活の安心・安全を守ることにもつながる。