「帰国難民」自己負担60万円も 新型コロナ待機要請で 宿泊は軒並み予約拒否


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ホテルで待機する男性家族の荷物(提供)

 新型コロナウイルスの水際対策を受けて、対象国から帰国する人たちから「帰国難民化している」との訴えが上がっている。国は公共交通機関の利用控えや14日間の待機を「要請」するが、その手配や費用は個人負担。公共交通機関を使わない国内移動や、予約しようとした宿泊施設から利用拒否など困難に直面し困惑しきった声が上がる。

 厚生労働省は中国、韓国、ヨーロッパ諸国など検疫強化対象地域からの帰国者に対し、入国時の検査結果によらず、公共交通機関を使用せず「検疫所長が指定する場所」で14日間待機するよう要請している。「指定する場所」は対象者が自分で手配せねばならず、ホテルなどの宿泊費は全額自己負担となる。

 県内の30代男性は、妻と乳幼児2人の家族を帯同した海外赴任からの帰国準備中に水際対策が強化された。厚労省、外務省のホームページを読み込むが「公共交通機関」に国内の航空便が含まれるか明示されていなかった。帰国を間近にした仲間内でも情報が錯綜(さくそう)しているといい、男性は感染の危険性が高い航空機を避け、空港から地続きで、親戚がいる県外で居所を探している。

 ホテルは軒並み予約拒否されたという。2週間の長期滞在となること、清掃の調整などから感染予防の待機だと説明すると「(感染していた場合)地域の観光を崩壊させる」と返すところもあった。

 あちこち相談して親戚の空き家が見つかったが、空港からはレンタカーで半日ほどの長距離移動となる。時差や引っ越し疲れがある上、久々の国内での運転に「事故なくたどり着くことに緊張する」と漏らす。さらにその家で生活するにも買い物にも出られない。小さな子どももおり「サポートがないと非常に大変」と不安は絶えない。

 ホテルが取れたとしても移動費を含め費用は60万円ほどになる。男性は「沖縄や北海道など離島住民、運転できない人は置き去りにされている」と指摘。感染者や帰国者への心無い発言や不安をかき立てる風潮もある中、「目に見えないウイルスが怖いのは理解できるが、感染者や帰国者を悪いことをした人のように扱わず、感染収束のためにできることをしてほしい」と訴えた。
 (黒田華)