【記者解説】緩いフェンス、高い情報公開の“壁” 沖縄米軍61人コロナ感染


この記事を書いた人 Avatar photo 宮里 努
基地内に入った車両の運転手に検温を実施する米兵ら=11日、金武町の米軍キャンプ・ハンセン

 【解説】在沖米軍基地で7~11日に61人の新型コロナウイルス感染者が確認され、世界一の感染者を出す米国がフェンス1枚を隔てて存在する危険性が改めて露呈した。日本は水際対策として米国からの入国を拒否しているが、米軍については日本の基地に直接飛行機で入ることが可能だ。日米地位協定上、入国時には日本の検疫が適用できない。検疫や行政の感染対策が及ばない「ブラックボックス」としての米軍基地は、深刻な感染症の侵入リスクを沖縄にもたらす。

 米軍は厳しい予防策を講じていると主張してきたが、今回の感染拡大で実効性の乏しさが明らかになった。今月4日の独立記念日も各部隊は規模縮小する方針を示していたが、関係者らは非公式に大規模なパーティーを催し、フェンスの外に繰り出している。クラスターにつながった恐れも指摘されている。今後、基地内の医療体制で対応できなくなった場合、基地外の病院を使う可能性もある。

 米軍の方針を追認するだけで、地位協定の改定にも後ろ向きな日本政府の対応は、国内にいる米軍人や軍属の感染症に対して無策であり、県民の健康と生命が脅かされている。

 米軍は11日、県が感染者数を公表することを認める姿勢を示したが、感染源や行動履歴についても透明性を高めることが必要だ。県は今後も、地域の安全と県民の生命を優先した積極的な行動が求められる。 (明真南斗)