ベートーベンにチャイコフスキー…壮大な音色響かせる 沖縄交響楽団が定演 ピアノ下里も協演


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下里豪志(左手前・ピアノ独奏)を迎えて、チャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番変ロ短調作品23」を演奏する沖縄交響楽団=2020年12月20日、沖縄市民会館大ホール

 沖縄交響楽団(沖響、宮城茂光団長)の第64回定期演奏会が昨年12月20日、沖縄市民会館大ホールであった。ドボルザーク「交響曲第9番『新世界より』ホ短調作品95」を演奏したほか、チャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番変ロ短調作品23」では南風原町出身のピアニスト下里豪志と協演した。下里の大胆かつ繊細な演奏とオーケストラの壮大な音色が融合し、観客を引き込んだ。指揮は阿部未来が務めた。

 ベートーベン唯一のオペラ「フィデリオ序曲作品72」で幕は開けた。冒頭、ファンファーレのように湧き上がるリズムと、ホルンとクラリネットのゆったりとしたハーモニーが交互に美しく響いた。明快なメロディーが次々と入れ替わり、躍動感のある構成で、最終楽章を勇壮に締めた。
 チャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番変ロ短調作品23」では下里の修練された技術や感情を込めた演奏が観客を魅了した。第1楽章ではオーケストラの雄大な演奏に、大胆で華麗なピアノの音色が響いた。続く第2楽章では前楽章と対比的にフルートの優美な演奏にピアノやチェロの独奏を穏やかに聴かせた。
 第3楽章に入ると、ロシア民族舞曲風の情熱的なメロディーを、下里を中心に展開。息をも付かせないような鮮やかなフレーズを力強く奏で観客からの熱い拍手が鳴りやまなかった。

 最後はドボルザーク「交響曲第9番『新世界より』ホ短調作品95」。阿部の繊細でダイナミックな指揮の下、抑揚の利いた音色を美しく響かせた。第1楽章ではホルンの明快なリズムや、フルートやオーボエのメロディーが統一感を生み、叙情的に聴かせた。第2楽章ではイングリッシュホルンのメロディーが郷愁を醸し出し、第3楽章では舞曲風のメロディーを刻み、弾むように奏でた。

 最後の第4楽章は重厚で力強い旋律を繰り返しながら、壮大な演奏を聴かせた。終盤、弦楽器が主題を奏で、管楽器の演奏も入れながら速度を速め、音を落としていきながらフィナーレを迎えた。

 アンコールは下里も再び出演し、アンダーソン「忘れられた夢」「そりすべり」を演奏した。公演は座席数を定員の約半数にした入場制限を行い、県の感染対策ガイドラインの対策を講じて開催された。

 (田中芳)