ゆいレール下にトンネル貫通 小禄道路、沖縄初の施工 沈下最大7.5ミリ、成功に安堵


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赤嶺トンネルの工事現場でモノレールの橋脚と交差する最深部を指さす赤嶺トンネル北作業所の澤井茂所長=6月、那覇市

 豊見城市と那覇空港を結ぶ「小禄道路」の整備が着々と進められている。今年4月には那覇市の赤嶺駅付近で自衛隊基地の地下をくぐる「赤嶺トンネル」が貫通した。トンネル北側は沖縄都市モノレール(ゆいレール)と交差する区間で、運行中のモノレール橋脚の真下にトンネルを掘る、沖縄初の施工となった。

 赤嶺トンネルは南北両方から掘り進められた。工事が最も難しかったのは関係者が「モノレール影響区間」と呼ぶ、上り線117メートル、下り線78メートル。地下の橋脚の基礎とトンネル上部の間が最短で約10メートルとなることから、特に注意が必要だった。

 県外では鉄道の下にトンネルを掘る例があるが、県内では初のケース。トンネルを掘れば地面の沈下が想定される。国と県、ゆいレールとの事前協議で許容された沈下量は16ミリ以内とされた。

 地上のモノレールに影響を与えない―。ゆいレール直下を通る北側を施工したのは飛島建設、太名嘉組、丸尾建設の3社共同企業体(JV)。JVの赤嶺トンネル北作業所の澤井茂所長は「当初から一番の課題だった」と振り返る。

 国側が示した設計に対し、JV側の提案で対策はさらに強化され、19年2月に着工した。

 橋脚一本一本に沈下を測るセンサーを設置し、24時間体制で監視した。

 近年は衛星利用測位システム(GPS)を使って監視することが多いが、今回は真上を走るモノレールが測位の妨げとなることから使えないと判断。代わりに水を使った機械で図る「原理としては原始的」な手法が使われたが、思わぬ課題も。

 沖縄の気温や強い日差しで機械内の水の体積が増減し、実際には沈下に変動がないにもかかわらず、たびたびセンサーが反応。警報が鳴り響くたびに、確認する必要が生じた。

 JV北作業所の兼松亮課長は「沖縄以外ではそんなにない現象だ。それでも、24時間の変動を把握するには、その手法しかなかった」と苦肉の策であったことを語る。「できることは全て準備した。だが、トンネル工事はどうしてもやってみないと分からない部分が残る。万が一、何かあっても人災にはならないように努めた」と掘削工事を振り返った。

 4月までに南北から掘ったトンネルが貫通した。貫通後の沈下量は最大でも7・5ミリで、許容値の半分以下だった。事前の予測も下回った。「うまく施工が済んだ。関係者一同が安堵(あんど)した」と兼松課長は胸をなで下ろした。

 小禄道路は2026年度の開通が目標だ。那覇空港自動車道の一部となり、南部や中北部の観光地へより短時間で行けるといった効果が期待されている。南部国道事務所の担当者は「12月中にはトンネル工事は完了する。期待に沿えられるよう、全線開通に向けて、引き続き努力する」と話した。 (知念征尚)