「困窮」の妊婦把握し支援 県立北部病院、聞き取り体制構築


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 宮里 努

 県立北部病院は、受診した妊婦全員の生活困窮度や子育て環境を聞き取り、支援や配慮が必要な妊婦を漏れなく把握するチェックシステムを4月にも開始する。支援が必要と判断されれば、行政や児童相談所、要保護児童対策協議会(要対協)など関係機関と続けている支援者会議と連携し、必要な対策につなげる。これまでもスタッフが個別に気付いた妊婦には対応してきたが、組織的に把握できる体制を整えることで潜在的なニーズにも対応できるようにするのが狙い。県内の医療機関で生活困窮度の聞き取りを体系的に行うのは初めてとみられる。

 出産後の養育困難が予測される妊婦には、定期検診の受診や支援者のネットワークづくりなど、妊娠期からの取り組みが重視されている。北部病院ではこれまでも「気になる妊婦」の情報を産婦人科と小児科の周産期カンファレンスで共有し、必要な場合は支援者会議などを経て地域ぐるみの支援につなげてきた。
 ただ小児科の佐々木尚美医師によると、今まで対応できたのは「スタッフが気付いた人だけ」が実態で、「ニーズはもっとある」とみている。
 聞き取るのは、母子手帳の交付時期や母親の精神状態、パートナーの状況、支援者の有無、きょうだいの養育や検診受診状況など。チェックシートを作って聞き取り、行政の保健師とも連携して配慮が必要な情報を共有する。必要な場合は支援者会議につなぎ、経済的に困窮していれば、入院費やおむつ代を公費負担する助産制度や児童扶養手当の紹介、孤立していれば子育て支援事業の紹介など、出産前後にわたり寄り添えるよう地域と連携する。
 佐々木医師は「困っている人たちは絶対的に情報が不足している。信頼できる人や機関につなぐことで、1カ月後には表情ががらりと変わっていることもある」とこれまでの手応えを語る。その上で「病院単独でできることではない。地域の『チーム』があってこそ機能できる」と強調した。(黒田華)