罪深い日米の政策決定者たち


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◆辛淑玉(しんすご)(人材育成コンサルタント)

 10年ほど前、米国で軍人たちにインタビューしたことがある。沖縄での女性への暴行や殺害について聞くと、「アメリカではできないことをしたいんだよ」「自分たちは、沖縄では何をしても裁かれないことを知っている。だって、パスポートを持って入るのではないからね」と、あっけらかんと語っていた。

 そして今も、沖縄では女性が殺されている。歩いていただけで殺されたのだ。しかしその事件は、日本政府にとって「タイミングの悪い」出来事ではあっても、心の痛みを伴うものではなかった。テレビ画面に出てくる閣僚たちのしらじらしさに、被害者の遺族はどれほどの思いをしていることだろう。想像するだけで胸がつぶれそうだ。

 聞くところによると、加害者はアフリカ系アメリカ人で、海兵隊を退役した後はアメリカに戻らず、沖縄の人々と共に暮らす道を選んだらしい。

 アメリカで若者たちが海兵隊に志願する背景には、貧困や民族差別など、アメリカ社会の深刻な矛盾が潜んでいる。加害者のプロフィルを知れば知るほど、沖縄の人々は、米軍基地には反対し続けてきたが、一方で米国の軍人とも、マイノリティーとも、懐の深い付き合いをしてきたことがよく分かる。

 十分な調査と加害者へのきっちりとした処罰、そして被害者の家族や親しい人々への心のケアが必要なことは言うまでもないが、加害者家族のケアもまた必要なのだ。

 今回もまた、米国と日本の最も醜い部分が沖縄で凝縮され、その結果が事件となって現れたことを知るべきだ。とりわけ、日米の政策決定者たちの罪は深くて重い。

 米国の軍事基地が、日本政府のカネで、沖縄に存在すること。これが事件の根底にあることは言うまでもないが、差別的な日米地位協定を改定もせずに今日まできたことは、必然的に悲劇を生む未必の故意であり、まごうことなき犯罪なのだ。

 沖縄の人々の命を代償に、為政者に利益がもたらされている。これでは民族浄化と同じではないか。日米安保の「美味(おい)しい」部分だけを享受している日本政府と、それを許している日本人の劣化と不正義は、人類の歴史に残るだろう。

 沖縄を、沖縄に返せ!