識者に聞く・争点と意義(5) 仲地博氏


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議会は知事と対等に

 地方議会と首長の関係は車の両輪に例えられる。国の議院内閣制で国民が選ぶのは議員のみで、首相は国会が選ぶ。行政権と立法権が協働する統治のシステムだ。県や市町村はそれと異なり、議会も首長もそれぞれ住民が選ぶ「二元代表制」だ。協働ではなく、対等に競争する関係でなければならない。

 議会はそもそも住民の多様な意見を代表する機関だ。県議会は県民の多様な意見や要求をくみ取り、妥協しながら一つの政策に集約させることが期待される。知事を支えるのか反対するのかで争うのではなく、どのような沖縄県をつくるかという点で議論するべきだ。

 現県議会は米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に対する立場で与野党が分かれている。今県議選を県政への審判と位置づけ、与野党構成に注目する見方がある。沖縄を取り巻く政治状況を考えるとやむを得ず、結果は新基地建設の行方に大きな影響を与えよう。だが、有権者が投票先を選ぶ基準は政策だけではない。本来は政策を第一に考えて投票してほしいが、特に県議選での投票行動は人柄、地縁、血縁、出身、同窓、職場のつながりなどに左右される。県議選の結果が移設問題への世論をそのまま反映するわけではない。

 この4年間で議員提出による政策条例が2本制定されたことは特筆に値する。復帰後の県議会で議員提案条例はこの2本を含めて6本のみで、知事提案が大多数を占めるのが現状だ。

 2012年4月に施行された県議会基本条例は前文で復帰前の立法院に触れ、「唯一住民を代表する機関として(中略)、住民福祉向上のための立法、住民の権利獲得のための決議等を精力的に行ったことを、我々議会人は忘れてはならない」としている。立法院の伝統を引き継ぐ県議会が自覚的に県知事と対等な緊張関係を築き、積極的に政策形成することを期待したい。

 県議会基本条例24条は「米軍基地に起因する諸問題への対応」を規定している。県政上の個別の課題について議会の対応を定める条項は全国でも珍しい。基地の重圧に苦しむ沖縄社会の姿が映し出されている。米軍属による女性遺棄事件に対しても主体となって県民の立場や怒りを表明してほしい。今後の基地問題への対処についても具体的な政策提示が求められる。(沖縄大学長 行政法)(おわり)