負担増に苦悩 騒音で眠れず 着陸帯アンケート


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2015年2月から正式運用が始まった東村高江のN4地区ヘリパッド=2015年12月(小型無線ヘリで撮影)

 【ヘリパッド取材班】東村と国頭村に広がる米軍北部訓練場の新たなヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設を巡り、琉球新報が行ったアンケートでは、東村高江と国頭村安波の住民からは「ここで生活する人のことを何だと思ってるのか」という怒りの声や「何を言っても仕方ない」という諦めの声が聞かれた。那覇市から車で約3時間、名護市からも約1時間半かかる場所に位置し、両区合わせて人口約300人の小さな集落。賛否について明言しない人の背景には、地域の融和を重視する思いも垣間見える。米軍基地の必要性を語る人もいれば、強行する国への怒り、届かない声の悔しさを語る人もいた。

 過去に2度、全会一致でヘリパッドの反対決議をした高江区。「この山のことを何でも知っている」と話し始めた70代の男性は「前以上に反対している」と大きな声で言った。N4地区のヘリパッドが完成してから夜間訓練が多くなり、眠れない夜が続いている。「この森にしかいない貴重な動植物もいる。静かなのが一番いい」と優しいまなざしを森に向けた。

 風通しの良い家の中で60代の女性は「みんな今も反対してる」と言った。米軍機が音を立てて近づいてくると、騒音で会話が途切れた。女性は「オスプレイが通るとコップも窓も、位牌(いはい)もガタガタ揺れるわけ」とあきれた表情で言った。

 60代の男性は「マスコミの取材には応じない」と最初は厳しい表情でアンケートを断った。匿名であることや本音を聞きたい、と返すと、取材に応じた。「気持ちは今も反対だ。だけど、20年も続く問題だから、早く終わらせた方がいい」と、苦渋をにじませた。「自分たちでは解決できない。国が造ると言ってるのに政治絡みになったら…。もう、疲れる」。絞り出すように、重い声で言った。

 これから新しいヘリパッドは全て国頭村安波に造られる。畑仕事をしていた70代の女性は手を止め、オスプレイが集落上空を通ることに反対だと強調した。「あれはとにかく音がうるさい。怖いよ。こっちに人は住んでるし生活もしている」と眉をひそめた。

 作業着姿の50代男性は「ヘリパッドも辺野古移設も反対。今の政府を見ていると、沖縄をばかにしている」と強硬に工事を進める政府に憤りを見せた。

 戦争体験者の80代の女性は「戦争の時、住民は山に逃げて、生き延びることができた。人の命を救ってくれた山の自然を破壊するのは反対だ」とヘリパッド建設反対を強調した。

<解説>基地被害 不安を反映

 東村高江と国頭村安波のアンケートで、ヘリパッド建設への反対が過半を超えた。2014年に完成したN4地区の二つのヘリパッドが運用されてから、オスプレイや米軍ヘリの離着陸訓練などが大幅に増え、住民らの負担が一層重くなっている状況の反映と言える。

 菅義偉官房長官はこれまで、北部訓練場の過半を返還することで「大幅な負担軽減につながる」と言及してきた。だが、午後10時以降も米軍機が住宅上空を旋回するため「眠れない」とする健康被害が実際に出ている。さらに新たなヘリパッドが建設されることで「逆に負担が増加する」と不安を増大させている。

 騒音の問題だけではなく、米軍北部訓練場と隣接する国立公園指定に矛盾を指摘する声も多かった。高江と安波は、絶滅危惧種で特別天然記念物のノグチゲラなど、やんばる特有の固有種が生息する。国頭、大宜味、東のやんばる3村の国立公園化は世界自然遺産登録を見据えているが、現在登録されている日本の世界自然遺産の中で、米軍基地と隣り合わせにある地域はどこにもない。国立公園を支えるのは地域に生きる地元住民らだ。工事着工のため、県外から数百人の機動隊を配備する政府の姿勢に嫌悪感を抱く住民も多い。いま一度、集落に生きる人々の声に耳を傾ける姿勢が政府に求められている。(阪口彩子)