糸満で日本兵遺骨2体 歯以外もDNA鑑定訴え


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大腿骨がはっきりと残る遺骨の周辺を調査する「ガマフヤー」の具志堅隆松代表=5日、糸満市束里と喜屋武の間に広がる丘陵

 糸満市束里と喜屋武の間に広がる丘陵でこのほど、沖縄戦当時の日本軍兵士とみられる遺骨が2体見つかった。遺骨を発掘した沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松代表が5日、現場を調査し確認した。2体とも完全な状態の遺骨ではなく、歯はない。厚生労働省の戦没者DNA鑑定は、歯からDNAを抽出する方法を取る。具志堅代表は「せっかく見つかったのに、歯がないために家族の元に返されないのはおかしい」と語り、腕や足の骨からのDNA抽出の必要性を改めて訴えた。

 遺骨は8月末、具志堅さんが発見し、その後丁寧な発掘作業を続けてきた。それぞれの遺骨のそばで「宮城」と彫られた折れた万年筆と、上部に犬のような動物の姿が施された一部欠損した印鑑も見つかった。万年筆と共に見つかった1体は、大腿(だいたい)骨やすねの骨など下半身の骨のみ。周辺に日本軍の鎌、軍靴、未使用の手りゅう弾もあった。

 印鑑と共に見つかった遺骨は、岩陰に隠れるようにあり、上半身は黒く焼けていた。折れている骨がほとんどだが、砕けた顎や頭蓋骨、大腿骨などがあった。遺骨のそばには女性用とみられる腕時計と、日本軍の軍服のボタンがあった。

 厚労省は今年、国が予算を負担し、戦没者の歯からのDNA鑑定を開始したが、歯がない2体の遺骨は、DNA鑑定の対象にならない。具志堅代表は「2体ともしっかりとした大腿骨があるのに、歯がないだけで鑑定すらされない。同じ犠牲者なのに、差別されている」と述べ、今後も国に対し、DNA鑑定の対象拡大を求めていく考えを示した。

遺骨と共に見つかった「宮城」と書かれた万年筆と欠けた印鑑