夢と責任胸に きょう成人の日


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 9日の「成人の日」を前に、県内各地では成人式や関連イベントが行われ、地域を挙げて大人の仲間入りを祝った。各会場では亡き友人の遺影を持って参加したり、DJプレイなどを楽しんだりした。後輩と吹奏楽の演奏を繰り広げたコンサートもあった。新成人たちは可能性に満ちあふれた未来に向け、共に二十歳を迎えた仲間たちと歩き始めた。

◆「剛、ずっと友達」/遺影と共に“出席”

他界した友人・岸本剛さんの遺影を手に一緒に式に参加する仲村渠亘さん=8日、名護市民会館

 【名護】ずっと、友達―。8日、名護市民会館で催された成人式で、小さな男の子の遺影を胸に抱えたまま、真っすぐ壇上に向け続けた男性がいた。東江中学校出身の仲村渠亘さん(19)。東江小2年の時に脳腫瘍で他界した親友・岸本剛さん(享年8)の遺影を膝の上に乗せ「気持ちだけでも一緒に」と式に出席した。遺影の中でにっこり笑う剛さん。剛さんの家族も見守る中、天国の親友と共に晴れの舞台に臨んだ。

 遺影はもともと入学式の集合写真だった。その時も隣にいたのは仲村渠さんだった。「家が近く、何でも話せる間柄だった」(仲村渠さん)。大勢の友人とにぎやかに遊ぶことが好きな、明るい男の子だったという。「剛が生きていたら、きっと今もずっと一緒にいると思う」

 同じく同級生の宇良宗徳さん(20)は、剛さんの遺影を実家まで預かりにいった。仏壇に手を合わせ、心の中で「お前の分も楽しんでくるよ」と声を掛けて式に臨んだ。遺影の笑顔が輝いて見えた。

 剛さんは小1の夏休み最終日に脳腫瘍を発症し、その2日後にはすぐ手術を受けた。

 小1の修了式だけは出たものの、学校に通うことはできなかったという。小さな体で病と闘い続けたが、小2に上がったばかりの2004年5月、天国へと旅立った。

 剛さんの母、光枝さん(45)は、息子が“出席”した成人式を2階席から見守った。「大きくなっていたらきっとこんな感じだったんだろうな」。仲の良かった同級生たちの顔を見て、一緒に歩めなかった12年間に思いを巡らせた。

 「小学校に少ししか通えていなかったのに、剛のことを覚えてくれている。うれしい」。心の中でずっと一緒に生き続けてくれる友人らの思いに触れ、光枝さんは声を詰まらせた。

 剛さんの実家まで遺影を返しに訪れた仲村渠さんは去り際、光枝さんに「また今度、母と一緒に来ますね」と声を掛けた。光枝さんは線香の香る仏壇に目をやり「成人おめでとう」と優しく伝えると、こらえきれずに涙をこぼした。
(長浜良起)