南城モデルに街づくり フィリピン・ビクトリアス 農産物市場、なんじぃも


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 【フィリピンで半嶺わかな】市民主体で体験型農園やオープンガーデンに取り組んできた南城市のまちづくりが、国境を越えてフィリピン・ネグロス島のビクトリアス市で生かされている。ビクトリアス市は2014年10月から南城市をモデルに、日本の政府開発援助(ODA)事業として地域資源を生かしながら環境に優しい農業と観光を結び付ける、アグリエコツーリズム(AET)での街づくりを進めている。

再オープンしたオーガニックマーケットで、有機農作物を買い求めるビクトリアス市民ら=7日、フィリピン西ネグロス州のビクトリアス市

 プロジェクトは国際協力機構(JICA)の草の根技術協力事業の一環で、NPO法人レキオウィングス(安和朝忠理事長)と南城市が提案者。

 人口約8万8千人のビクトリアス市は、市面積の約72%が農地で砂糖産業が主体。砂糖価格の暴落のたびに打撃を受けてきた。持続可能な発展のため、市はAETを優先施策に掲げる。

 7日、ビクトリアス市で有機農産物の直売所・オーガニックマーケット(OM)が再オープンした。南城市大里の軽便駅かりゆし市からヒントを得て、有機農家が出荷する場をビクトリアス市が造った。市は20年までに有機農家数を現在の66から150に増やす計画で、OMの成功の鍵を握る。

 OMは16年に一度開設したが、テナント式を取ったために各農家が店番を1人置く必要があり、人件費がかかり農家の収入増につながらなかった。今回は、一つのレジで全農家の作物を精算できるよう改装し、満を持して再オープンした。

 OMのマネジャーのジェームス・グルマティコさん(44)は「以前は有機で栽培しても、付加価値がなく農家の収入につながらなかったが、OMが作物を高く買い取り、農家の利益を増やした。軌道に乗せ、多くの有機農家を育てたい」と意気込む。

オーガニックマーケットの再オープンを祝い「トリィダンス」を踊る関係者や市のキャラクター・トリィら

 ビクトリアス市では、この4年間で「なんじぃ」をモデルにした市のキャラクター「トリィ」が誕生し、イベントでPRに活用されている。さらに体験型農園ツアーに取り組み始めた農家が五つあり、市民の庭を一般に開放する南城市の「オープンガーデン」をヒントに、26のバランガイ(字)のごみ捨て場が緑あふれる空間に変わった。

 ビクトリアス市のフランシス・フレデリック・パランカ市長は「観光地として認識されるにはまだ課題が多いが、南城市との交流で観光業がどれほど重要か分かった。南城モデルの街づくりを成功させ、他の市も続いてもらいたい」と自信をみせる。

 南城市の知念哲雄企画部長は「自分たちの活動を振り返る機会となった。将来的にビクトリアス市との人的・経済的交流に発展させられる可能性もある」と期待を込めた。