健康被害 基準以下でも 有機フッ素化合物 米政府が最新研究


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 在沖米軍基地周辺の河川から、高濃度で検出されている有機フッ素化合物のPFOS・PFOAの有毒性に関し、米国の最新の研究で、沖縄県が指標とする基準値より低い値でも健康を害する危険性があると報告されていたことが10日までに、分かった。日本国内では使用が禁止されているPFOS・PFOAは、飲料水に含まれる量の基準値がなく、県は米環境保護庁の生涯健康勧告値の1リットル当たり70ナノグラムを指標としている。最新の報告書では勧告値の7~10分の1で健康への影響があるとされる。識者は「県は基準を検証すべきだ」と指摘している。

 発がん性が指摘されるPFOS・PFOAは、県の調査で嘉手納基地と普天間飛行場周辺の河川下流部で多く検出されている。基地が汚染源の可能性が高いとの指摘があるが、米軍は使用履歴を明らかにせず、基地内調査も許可していないため、汚染源は特定されていない。県は約2億円を投じて北谷浄水場で浄化している。浄化水から本年度は最大で勧告値をやや下回る63ナノグラムが検出されている。

 報告書は、米保健福祉省の有害物質・疾病登録局が6月20日に公表した「パーフルオロアルキル基の毒性プロファイル・パブリック・コメントのための草案」(852ページ)。PFOS・PFOAの基準に関する具体的な記述はないが、米メディア「化学&工学ニュース」によると、専門家による試算で、健康に影響を与える数値はPFOSは1リットル当たり7ナノグラム、PFOAは1リットル当たり11ナノグラムに換算されるという。

 環境問題の調査団体「インフォームド・パブリック・プロジェクト」の河村雅美代表によると、米国内ではPFOS・PFOAの安全性が問われ、汚染の影響を受ける州では独自で厳しい基準値を設定するなどの対策が講じられているという。「米軍はPFOSを含む泡消火剤を1970年代から使用してきた。県民が長期的に汚染にさらされてきた事実を踏まえた対策が必要だ」と指摘した。
 (清水柚里)