「沖縄戦被害国家賠償訴訟」上告棄却 住民の敗訴が確定


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 沖縄戦で被害を受けた住民や遺族ら36人が国に謝罪と1人当たり1100万円の損害賠償を求めた「沖縄戦被害国家賠償訴訟」で、最高裁第3小法廷(戸倉三郎裁判長)は13日までに、原告側の上告を棄却した。原告側敗訴の一審那覇地裁、二審福岡高裁那覇支部判決が確定した。11日付。

 原告側は国や日本軍が国民保護義務を怠り、被害回復の補償をせず放置したのは違法と訴えたが、2016年3月の一審判決は「戦時の旧憲法下で行われた国の戦争行為に対する賠償責任は認められない」などとして請求を棄却した。

  17年11月の二審判決は日本兵の傷害行為や原告が抱える外傷性精神障害など戦争被害を認定しながらも、一審判決を支持。戦争では全ての国民が被害を受けたとして「沖縄戦特有の事情から直ちに損害賠償や謝罪を請求することは認められない」と判断し、原告側の控訴を棄却した。

 最高裁の決定は、違憲性や判決理由に食い違いがあるなど、原告の訴えは上告の要件を満たしていないとして退けた。

 瑞慶山茂弁護団長は「不当な決定だ。二審判決は日本軍の残虐な行為、住民被害を認定している。国の主張や原告の主張を退けた判決には憲法に関わる問題があると主張したが、検討さえしなかった。曲解している」と指摘し「市民を救済できる最後のとりでが役割を投げ捨てた。無責任だ」と批判した。その上で「訴訟で問題を明らかにした意義はある。今後、救済立法制定の運動につなげたい」と力を込めた。

<用語>沖縄戦被害国家賠償訴訟

 日本で唯一、多くの民間人を巻き込んだ地上戦が行われた沖縄戦の住民被害に対する国の責任を問うため、2012年8月に民間戦争被害者らが起こした訴訟。原告は戦後補償の在り方が軍人・軍属中心で、民間被害者への補償立法がないことに違法性を訴え救済を求めたが、一審判決は旧憲法に国家賠償の規定はなく、公権力の行使について賠償責任を認める法律はなかったとして、戦争行為による国の責任を否定した。原告はその後も訴訟で国の戦後処理が終わっていないことを問い続けた。