契約用地、違法開発か 石垣陸自、来月着工 市民「工事延期を」県「指導困難」 <透視鏡>


この記事を書いた人 大森 茂夫
陸上自衛隊駐屯地用地として売買契約されたゴルフ場の開発許可問題で、県に対応を要請する嶺井善共同代表(右から2人目)ら「石垣島に軍事基地をつくらせない市民連絡会」メンバー=8日、県庁土木建築部長室

 石垣島への陸上自衛隊配備のため防衛省は1月末に私有地約13ヘクタールの売買・賃貸借契約を結んだが、この土地は配備推進派の石垣市議が代表を務める会社が経営していたゴルフ場で、これまで都市計画法(都計法)に基づく開発許可を得ていなかった違法開発の疑いが持ち上がっている。県はゴルフ場の開発許可の申請がなかったことは確認しているものの、売却後の土地使用について国に指導するのは法的に難しいとの見解を示す。一方で、地域住民らは用地取得手続きの不透明さや拙速さを指摘し、防衛省が3月着工にこだわる造成工事の延期を訴える。

 応酬

 防衛省は1月31日、石垣市平得大俣のゴルフ場「ジュマールゴルフガーデン」の土地のうち約9ヘクタールを購入し、約4ヘクタールを賃貸する契約を結んだ。石垣島の陸自配備計画で用地確保の契約を交わしたのは初めてで、駐屯地建設を予定する約46ヘクタールの約3割に当たる。

 しかし契約に先立つ昨年末の市議会12月定例会の質疑で、同ゴルフ場が県から開発許可を得ていないことが明らかになった。都市計画法違反の可能性が浮上する中で、部隊受け入れを表明している中山義隆市長は「この件と配備については別問題だ」と答えた。

 こうした中で8日、「石垣島に軍事基地をつくらせない市民連絡会」の共同代表らが県土木建築部を訪れ、事実確認を行い、都計法に基づく監督処分などの対応を取るよう要請した。市民連絡会によると「ジュマールゴルフガーデン」は友寄永三市議が代表を務める有限会社ジュ・マール楽園の敷地で、1995年にグラウンドゴルフ場として整備され、徐々にゴルフ場として整備されていったという。ゴルフ場の一部が掛かる市有地の無断使用も指摘されている。

 琉球新報の取材に友寄市議は「議会でこの話が出る前も後も行政から何も言われていない。資料を出せと言われて出さなかったわけでもない。違法性は全くない。防衛省との土地の売買に関しても問題はない」と答えている。

 及び腰

 これに対し、市民連絡会の要請に対応した県の嘉川陽一建築都市統括監は「都市計画法の手続きがなされていないのは事実」と説明する。一方で「違反の事実を特定するには調査にかなりの時間が必要だ」と現時点での判断は避ける。国の事業は開発許可申請の対象外となることもあり「違法だったことをもって、購入後の国の開発に指導することは法律ではできない。ゴルフ場の経営も終了している。調査を行う目的はないのかと考える」と違反の特定に及び腰だった。

 要請に同行した次呂久成崇県議(社民・社大・結)は「県は調査、把握する責任を果たさないと、開発規制逃れを許すことにもなる。国の事業だからといって一切の行政手続きが排除されている問題がある」と反発を見せた。

 沖縄防衛局は3月1日以降に駐屯地整備で0・5ヘクタールの造成工事に着手することを既に県に通知している。県環境影響評価(アセスメント)条例の改正で2018年度から20ヘクタール以上の開発に環境アセスの実施が義務付けられるが、防衛局には3月中に一部でも着手することで県条例の適用を回避したい狙いがある。

 連絡会の上原秀政共同代表は「農業用水や飲料水の水源が下流にあって環境の懸念が市民にある。それにもかかわらず防衛省はアセスを逃れるように工事を始める。個人との売買契約で、石垣市民5万人の将来が決まるのはおかしい」と県に対応を求めた。 (与那嶺松一郎、大嶺政俊)