〈私の視座 2・24県民投票〉5 元県議会議長・外間盛善氏 たらい回しでいいのか 「仕方ない」の意識を危惧


社会
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外間盛善氏

 ―県議会議長時代に沖縄の過重な米軍基地負担を全国の議長に訴えた。

 「沖縄の過重な負担を全国に分散してほしいとお願いしたことがある。しかしどこも『危ない、駄目です』と引き受けなかった。日本全体の平和と安全を保障するため沖縄に一括で置くよりもいいと思ったが、皆、米軍の配備には反対だった」

 ―菅官房長官が「県民投票の結果にかかわらず、方針は変わらない」と発言した。

 「独裁国家の発言だ。民主主義国家の権威あるポストの人がこういう言葉を発するのは許されない。沖縄に配備するのに県民に相談する必要はないと県民の意向を踏まえない。『決めたから従え』というのは、自由主義社会で過去こういうことはめったに例がない」

 ―米軍普天間飛行場の辺野古移設については。

 「危険な米軍基地を沖縄県だけでたらい回しにしていいのか。辺野古では安全なのか。危険なのはどこでも危険だ。基地ができれば、軍の従業員として人が集まる。辺野古が大きい町になり、またいずれ危険だとなりかねない」

 「今の基地は米軍が占領して、そのまま居座り続けているのと、土地を強制接収して造られたものだ。新しく辺野古に造らせたら、次はどこにまた造るのか。『米国の言うことは聞かないといけない』となる。自民党経験者は『辺野古移設は仕方がない』と言う人がはるかに多いが、辺野古に造られれば、歯止めがきかなくなるのではないか」

 「海のきれいな県内の中でも辺野古は一番だ。自然が豊かだから観光立県・沖縄になる。それを汚すような基地の整備の在り方はよくない」

 ―基地がなければ沖縄経済は成り立たないという意見もある。

 「1972年の本土復帰前は米軍基地がないと仕事がない、経済が成り立たないという時代だった。今はむしろ基地が沖縄県の経済活動・土地利用の点から足かせになっている。基地を全国に分散し、海外に引き揚げてもらおうと知事がずっと求めてきたが、実現していない」

 「沖縄に米軍基地があるからむしろ70年以上、我が国の平和と繁栄がある。日米政府としては沖縄を利用して国際社会の平和と安全を守っているという形と言っても言いすぎではない」

 ―戦争を体験した。

 「小学1年生の時だ。沖縄戦で死人だらけの南部をさまよい、『死ぬならシマで死のう』と戻ってきた。家は焼かれており、海辺の壕に避難したが、祖母は米軍の機銃掃射で蜂の巣状に撃たれて死んだ。子どもを抱えた叔母もだ」

 「今の戦争は核爆弾のついたミサイルが飛んでくる。74年前の沖縄戦より悪い状況になりかねない。敵は基地がある所しか攻撃しない。米軍基地にミサイルが飛んでくる。1、2発で県土、県民の生命が失われる。『沖縄県は、米軍基地があるために全部犠牲になってしまいました』で済まされるのか」

 (聞き手 中村万里子)
 (おわり)

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 ほかま・せいぜん
 1937年、豊見城市生まれ。沖縄大卒。豊見城村議、県議を経て県議会議長、自民党沖縄県連会長などを歴任。