急に制御不能に… ドローン大手が基地周辺で飛行制限 ユーザーに戸惑い


社会
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ドローンの安全飛行のため、飛行地域情報の更新を促すDJI社のドローン操縦アプリ=31日

 県内の米軍基地周辺を飛行制限エリアに設定していたドローン最大手「DJI」。同社のシステム更新に伴う措置だが、更新内容に気づかなかったユーザーには戸惑いが広がった。6月施行の改正ドローン規制法の規制対象に辺野古新基地建設現場が含まれるかどうかが焦点となる中、規制拡大を後押しするようなメーカーの動きに疑問の声も上がっている。

 「急に操縦できなくなった。何が起きたのかと思った」。ドローンによる米軍関連施設の監視を続ける市民団体「沖縄ドローンプロジェクト」の土木技師、奥間政則さんは振り返る。

 奥間さんは4月、飛行制限エリアの一つである伊江島飛行場近くの農道でドローンを操作していた際に異変に気づいた。操縦で使うタブレット上にエラーメッセージが表示され、機体の制御が効かなくなった。昨年10月、同じ地点から飛行させた時には問題なく操作できただけに「妨害電波でも出ているのか」と疑った。

 同じ現象は普天間飛行場近くの市街地でも発生。いずれの地点でも国交省からの許可を受けており、奥間さんは「原因が分からず困惑した」と話した。

 DJIは2月、システム更新による飛行制限エリアの拡大をプレスリリースで発表。自社のフェイスブックなどでも告知していたが、ユーザーへの個別の詳しい説明を行っていなかった。

 今回、同社が飛行制限エリアとした米軍基地周辺の空域は、13日からの改正ドローン規制法施行後、報道機関も含めて基地の司令官など管理者の同意を得た上で、飛行の48時間前までに所轄の警察署長に届け出ることが必要となる。

 同法施行後は、普天間飛行場の代替施設予定地となっている辺野古新基地建設現場でのメディアや市民らによる監視継続が危ぶまれており、奥間さんは「メーカー側の事実上の自主規制。辺野古の現場にもこうした動きが広まらないか不安だ」と表情を曇らせた。

 早稲田大教授でジャーナリストの野中章弘さんは「ドローン規制は国民の『知る権利』の侵害につながる。ドローンが『権力の監視』のためのツールとしても機能していることを、メーカー側も意識する必要がある」と強調した。 (安里洋輔)