琉歌・短歌の新世界へ 組歌「おきなわ」 クラシックでいざなう


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 琉歌や短歌をクラシック音楽に乗せ、県内外の作曲家、声楽家、琉球芸能実演家らがつくり上げる「カールマン・イムレ&玻名城律子おきなわを詠う 組歌『おきなわ』~琉歌・短歌の新しい世界~」が24日、南城市文化センター・シュガーホールであった。県民に親しみのある琉歌や短歌を楽器の音色、歌声で演出するという意欲的な舞台を堪能した。

 第1部の幕開けはカールマン・イムレ(チェロ)、大藪祐歌(ピアノ)が奏でる「てぃんさぐぬ花」。「南城を詠う~琉歌編~南城景観」では斎場御嶽、受水走水など同市の名所や行事を題材にした8首の琉歌を、諸見里杉子が詠み上げる。その後、カールマンが力強く弦を弾き、玻名城律子(ソプラノ)が会場を包むような歌声を響かせた。観衆の目の前に自然と同市の風景が浮かび上がっていく。
 「おきなわを詠う~短歌編~古里の海より」、「平和への祈りを詠う~短歌編~摩文仁野-白き風車-」では歌人、比嘉美智子が込めた戦死者などへの思いを、玻名城が荘厳な雰囲気を感じさせるように歌い上げた。
 第2部の「恋を詠う~琉歌編~」では瑞慶覧尚子が既存の琉歌7首から構成し、作曲した「月夜恋歌」を組踊で女形を演じることの多い金城真次が朗読した。組踊の唱えに乗せて、はかない女心を情感たっぷりに表現する。東江貴子(ピアノ)の音色と玻名城が切ない心情を表現しながら、時折怒りにも似た力強い歌声が響くと、会場には緊張感も漂った。
 中村透が作曲した「無伴奏チェロが詠うトゥバラーマ変奏曲」は「八重山をともに旅したカールマンとの12年来の約束」だったという。チェロの優しい音色で八重山の風が吹き抜けていった。
 30音の「琉歌」、31音の「短歌」とそれぞれ限定された字数に思いが込められた作品。その思いをくみ取り、2人の朗読者、3人の作曲家、4人の音楽家がつくり出した新たな芸能。その融合がさまざまな風景を演出して、幕を閉じた。
(大城徹郎)

琉歌、短歌を音楽、歌声に乗せる(左から)カールマン・イムレ、東江貴子、玻名城律子=24日、南城市文化センター・シュガーホール
切ない女性の心を詠む金城真次