ひめゆり資料館、元学徒隊の館内講話を来年3月終了へ


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修学旅行生への講話で戦争体験を語る元ひめゆり学徒隊の証言員=2013年1月、ひめゆり平和祈念資料館の多目的ホール

 【糸満】糸満市のひめゆり平和祈念資料館(島袋淑子館長)で1989年の開館以来、戦争体験を語り伝えてきた元ひめゆり学徒隊の生存者たちが、「証言員」として修学旅行生を対象に、事前の予約を受けて行う館内での講話を2015年3月で終了する。戦後70年を前に、証言員の年齢が80代後半を迎え、人数も開館時の27人から9人に減少したことで証言員の体力に配慮した。4月以降は戦争体験のない学芸員や説明員が講話活動を引き継ぐ。

 学芸課長の普天間朝佳さん(54)は「これまで、半年前から館内講話の予約を受け付けてきた。しかし証言員が年齢を重ねる中で、半年後の確約ができなくなった」と終了の理由を説明する。
 同館のピーク時の講話回数は年間千回以上に上り、証言員1人当たり年間100回以上の講話をこなした時期もあった。しかし高齢化で証言員の体力が衰える中、13年9月には館外講話を終了。現在は1日に1回の館内講話が精いっぱいの状況になっている。
 証言員の仲里正子さん(87)は「講話は私たちの体験を子どもたちに直接伝えることができる大切な時間。真剣に話しを聞く姿にいつも励まされてきた。終了するのはやはり寂しい。一日でも長く語り続けたい思いがある」と胸の内を語った。
 来年4月以降は学芸員や説明員が証言員からバトンを受け継ぎ講話を担う。25年間、証言員と活動を共にしてきた普天間さんは「重いバトンだが、証言員の活動を受け継ぐことが大切な仕事だと思っている」と力を込める。
 同館では証言員の高齢化を見据え、02年に「次世代プロジェクト」を立ち上げ、証言員の活動を継承する人材の育成に取り組んできた。島袋館長(86)は「戦争を二度と起こしてはならないという一心で証言員は語り続けてきたが、徐々に活動を終える準備をしないといけない時期だ。資料館には私たちの思いを受け継ぐ若い職員が育っている。不安はない」と力強く語った。館内講話は終了するが、証言員による館内での証言活動は来年4月以降も継続する。