静の琉球、動のバリ「舞が描くもの」 比較し魅力紹介


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 バリと琉球の舞踊を上演する「舞が描くもの~バリのかたち 琉球のかたち~」が1月25日、浦添市の国立劇場おきなわであった。バリ・ガムランと舞踊のグループ「マタハリ・トゥルビット」が主催した。

両地域の舞踊を時代やテーマごとに比較することで分かりやすく魅力を伝えた。
 マタハリは県立芸大OBが2005年に結成した。今回はマタハリに加え、バリ舞踊家の荒内琴江、芸大で指導していたガムラン奏者の梅田英春らも出演した。琉舞は太圭流や芸大OBを中心に出演した。
 第1部は古典の女踊と仮面舞踊を披露した。琉球では王国時代に宮廷舞踊が形成された。バリでも16~20世紀初頭の王朝時代、神々への奉納舞踊を基に王族の儀礼や娯楽として宮廷舞踊が発展したという。
 公演で披露された女踊は琉舞が「本貫花」、バリが「レゴン クラトン ラッセム」。仮面舞踊は琉舞が醜女の面をかぶる「しゅんだう」、バリは魔物を表現する「ジャウック マニス」を踊った。
 琉球の音楽は歌三線中心だが、バリは打楽器できらびやか、にぎやかな演奏を聞かせた。琉舞はあまり感情を顔に出さないが、バリは表情豊か。琉舞の所作がゆったりとしているのに対し、バリは指先まで絶えず動かす。静の琉球、動のバリといった印象を受けた。手の表現が重要であるところは共通している。
 第2部は近代の舞踊を紹介した。廃藩置県後の沖縄では庶民相手の舞台で日常を描いた雑踊が上演された。バリでは1908年にオランダの植民地支配によって王朝時代が終わり、村々の儀礼や娯楽のために舞踊や音楽が上演されるようになったという。動植物や日常生活など身近な題材から作品が生まれた。
 公演では恋をテーマにした踊りとして琉舞の「加那よ天川」、バリの「オレッグ タムリリンガン」を上演した。「オレッグ―」はオス蜂がメス蜂に引かれるという内容だが、琉舞では動物を演じる演目はあまり見られない。
 最後は漁を題材にした踊りとして琉舞の「谷茶前」、バリの「ヌラヤン」を披露した。「谷茶前」は漁民の着付けだが、「ヌラヤン」は華やかな衣装を着るのが印象的だ。古典に比べて振り付けが具象的になるのは共通している。
 県外やアジアの芸能を紹介する公演は国立劇場おきなわなども定期的に開催しているが、沖縄の芸能に比べると集客は苦戦する傾向がある。本公演は満員になったが、沖縄の芸能と比較することで入りやすかったかもしれない。
 沖縄の芸能も誇れるものだが、多様な分野の実演家とそれを楽しめる観客がいれば、より豊かな芸能の島になる。公でも民間でも海外と結ぶ活動が活発になれば、沖縄が芸能交流の要石となることも夢ではないと思う。(伊佐尚記)

「オレッグ タムリリンガン」を踊る荒内琴江(左)と仲本久乃=1月25日、浦添市の国立劇場おきなわ
「加那よ天川」を踊る皆川律子(左)と平良昌代