悪の花形、異彩放つ 「十貫瀬の七つ墓」36年ぶり再演


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 国立劇場おきなわの沖縄芝居公演「怪談劇 十貫瀬の七つ墓」(城佐武郎作)が15、16の両日、浦添市の同劇場であった。同作は沖映演劇が制作し、当時と同じ規模では36年ぶりに再演された。初演で主役を演じた瀬名波孝子が指導した。高平虎寿役の嘉陽田朝裕が悪の花形として異彩を放った。

 真鍋(伊良波さゆき)と宜保松金(東江裕吉)は将来を誓い合う仲。だが真鍋を奪おうとする高平によって宜保は島流しにされる。高平は真鍋の父(当銘由亮)と友人安里(天願雄一)をひそかに殺害。父の敵を討つからと強引に真鍋と結婚する。だが、真鍋が宜保の子を宿していると知ると、激高して殺害。真鍋は怨霊となって高平を討ち、墓の中で子を育てる。
 嘉陽田、知念亜希、平敷勇也といった普段二枚目やヒロインを演じる役者が悪役に回ることで華やかさが増した。嘉陽田は狂気的な笑みや芝居がかった口調を使い、他人を見下しながらもどこか色気のある高平を演じた。「瀬名波先生が好きなようにやらせてくれたので、自分なりに考えて演じた。(過去に演じた)玉木伸さんは手本だが、まねにならないようにした」と手応えを感じていた。
 怪談劇を得意とし「幽霊孝子(ゆーりーたかこー)」と呼ばれた瀬名波の演技法継承も焦点の一つだった。伊良波は「幽霊の演技は難しかった」と振り返り、「怖がらせるだけでなく、子や夫への愛情が感じられるように演じた」と話した。
 「若ければもう一度(真鍋を)演じたかった」と本作に強い思いを持っていた瀬名波。今回は真鍋の霊が訪れる店のハンシーをコミカルに演じ、花を添えた。「若手ができるかハラハラしていたが、思った以上にやってくれた」と笑みを浮かべた。
 高宮城実人も真鍋を支える下男大主(うふしゅ)を好演した。沖映と同様に劇場の舞台装置・美術も生かされた。ほかの出演は仲嶺眞永、新垣正弘、赤嶺啓子、金城真次、宇座仁一ら。地謡は新垣俊道、喜納吏一、入嵩西諭。
(伊佐尚記)

欲望のままに人をあやめ続ける高平虎寿(嘉陽田朝裕)=16日、浦添市の国立劇場おきなわ
宜保松金(右・東江裕吉)に子を託す真鍋の霊(伊良波さゆき)