誕生10年 未来展望


物産、自然、世界遺産… 地域の宝 活用探る

 琉球新報移動編集局「うるまウイーク」(主催・うるま市、琉球新報社)が8日から15日まで開催される。石川市、具志川市、勝連町、与那城町が合併して「うるま市」が誕生して10周年。メーン事業となる13日の「地域づくりフォーラム」では、「うるま市の宝(ひと・もの・ぶんか)について考える」をテーマに、うるま市内4校の小中学生が実際に現場を歩いて見聞きした「うるま市の宝」を発表する。うるま市勝連で子どもたちによって継承され続けている現代版組踊「肝高の阿麻和利」を手掛けた平田大一さんが講演し、地域の魅力を活用したうるま市の将来を議論する。期間中は報道写真展や、FC琉球の協力によるサッカー教室など多彩な催しを実施する。うるまウイークの開幕を前に、海と緑に囲まれた景色、歴史や文化の魅力あふれるうるま市を紹介する。

 うるま市は2005年4月、石川市、具志川市、勝連町、与那城町の2市2町が合併して誕生した。「サンゴの島」という意味を持つ「うるま」。金武湾、中城湾に延びる海岸線、平安座~伊計島、津堅島など離島もある県内で6番目の市域を有する広大な市だ。面積は87・01平方キロメートル、人口12万2007人、世帯数は4万9183戸(11月1日現在)。

◇豊かな自然と農水産物

 うるま市は石川岳、天願川、東海岸のビーチや島しょ地域の自然など緑と水資源にあふれた街だ。石川の山城区では沖縄で唯一現存する在来種「山城茶」が栽培される。
 具志川地域から与那城照間地域にかけて畳の素材となるい草「ビーグ畑」が、勝連城跡のふもと勝連南風原ではオクラをはじめとした農産物の畑が広がる。
 中城湾と金武湾を隔てる与勝半島。近海は全国一のモズクの産地だ。東洋一の長さと美しい景観を誇る海中道路周辺は干潮時には巨大な干潟が広がる。海中道路を渡った宮城島、伊計島にはサトウキビ畑に加え、タバコ畑や黄金イモの畑が広がる。

◇雄大な歴史と文化遺産

 豊かな自然に囲まれたうるま市は歴史も雄大だ。与那城屋慶名から橋を渡る薮地島の薮地洞穴からは約6千~7千年前の土器などが発掘されている。
 2000年に世界遺産に登録された勝連城跡は、中国との交易が盛んだった15世紀の歴史と、10代目の按司「阿麻和利」という人物とともに広く知れ渡った。勝連城跡は年間17万人が訪れ、世界最大の旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」の「行ってよかった!日本の城ランキング2015」でも12位にランクインした。
 戦後、民間人の収容所から復興の中心地となった石川。政治、経済、教育文化の中心地として沖縄諮詢会や民政府が設置された。小那覇舞天ら芸能人や歌手も多く誕生。現在は闘牛大会の拠点ともなり、文化や娯楽で人々を鼓舞してきた。
 文教の街として、沖縄文教学校、沖縄外国語学校、農林学校が設置された具志川地域は、2市2町の合併でうるま市になった現在、市街地として開発が進んでいる。

海中道路を走り抜ける第14回あやはし海中ロードレース大会の出場ランナーたち=2014年4月6日、うるま市与那城
2000年に世界遺産に登録された勝連城跡。年間17万人が訪れる名所として知られる=1月5日(小型無線ヘリで撮影)
熱戦が展開され、満員の闘牛ファンを魅了した昨年の秋の全島闘牛大会=2014年11月9日、うるま市石川多目的ドーム
第60回沖縄全島エイサーまつり大会で、美しい隊列を組みながら踊るうるま市平敷屋青年会=9月6日、沖縄市コザ運動公園陸上競技場

島袋俊夫市長あいさつ  「好きになる」まちを

 琉球新報移動編集局「うるまウィーク」の開催にあたり、一言ごあいさつを申し上げます。
 うるま市は2005年4月に当時の具志川市、石川市、勝連町、与那城町の4市町が合併して誕生し、今年10周年の節目の年を迎えました。
 市は、記念すべきこの年に、市民全体で祝い、喜びを分かち合い、あらためて私たちのまちを愛し、誇りを共有するため、「あした もっと好きになる うるま」をキャッチフレーズに「うるま市合併10周年記念事業」と銘打ってさまざまな事業を展開しているところでございます。
 今回は特に、市民挙げてのお祝いとするため、「うるま市合併10周年」を冠した泡盛記念ボトルや記念切手の制作販売、各種イベントなど民間事業所や市民団体による市民レベルの事業を活発に展開していただいております。多くの市民の皆さまが10周年の節目に思いを致し、さまざまな取り組みをしていただいていることに深く感謝を申し上げます。
 今般の「うるまウィーク」も記念事業の一環として実施するもので、この1週間は、うるま市において報道写真展や地域づくりフォーラムなどを開催しながら、うるま市に関するさまざまな記事を重点的に報道していただくことになっております。
 さて、うるま市は豊かな自然環境の中、世界遺産に登録された勝連城跡など、古い歴史と多様な伝統文化がいきづくまちであります。多くの地域で、エイサーをはじめ獅子舞、闘牛など伝統的な行事が活発に開催され、これらを素材に「肝高の阿麻和利」や「龍神伝説」など新しい文化も創造されております。ほかにも海中道路や島々の風光明媚(めいび)な景観、特産品、中城湾港新港地区など、市の発展に向けて必要な魅力と可能性を秘めた素材が豊富にございます。
 これらの素材を生かしつつ、12万余の市民、市外で活躍されている多くの市出身者、うるま市を愛する多くの皆さまが手を取り合って「これが私たちのまち うるま」と実感し、「あした もっと好きになる うるま」となるようなまちづくりを進めていきましょう。


ミスうるまが紹介するうるま市の宝

 世界のウチナーンチュに関わって知った歴史やハワイとの交流、しまくとぅばの活動からうるまの三つの宝を紹介します。
 来年は世界のウチナーンチュ大会、世界のうるまんちゅ大会も開催されます。県内、国内だけでなく海外にいる、うるまんちゅにも、うるま市の魅力を伝えていきたいと思います。

<肝高の阿麻和利>地域づくり 注目浴びる

 うるま市の中高生が出演している現代版組踊「肝高の阿麻和利」。沖縄に古くから伝わる伝統芸能「組踊」をベースに、現代音楽とダンスを取り入れて、勝連城10代目城主「阿麻和利」の半生を描いている。
 「肝高の阿麻和利」は、1999年に当時の勝連町教育委員会が、子どもたちの感動体験と居場所づくり、ふるさと再発見として、子どもと大人が参画する地域おこしを目的に企画された。
 2000年3月に阿麻和利の居城であった「勝連城跡」で実現した奇跡の舞台が、今も続く「肝高の阿麻和利」の記念すべき第1回公演となっている。
 その後、03年には東京公演、08年にはハワイ公演を実現している。観客動員は延べ13万人を達成し、舞台だけでなく地域づくりの場として県内外から注目を浴びているが、演技や舞台の完成度の高さはもちろん「地域文化の再発見」など、活動そのものが地域の振興として貢献している。
 次回の公演は11月21、22の両日、昼と夜の2回、行われる。場所はうるま市勝連のきむたかホールで。問い合わせはあまわり浪漫の会(電話)098(978)0608。

うるま市の子どもたちによって受け継がれる現代版組踊「肝高の阿麻和利」(あまわり浪漫の会提供)

<田場(たーば)ぬてぃーだぬ家ー>しまくとぅば継ぐ場に

 うるま市田場にある古民家の瓦屋「沖縄のわらべ唄と民話の里 田場(たーば)ぬてぃーだぬ家ー」。子どもたちが集まって童唄を歌い、民話語りを聴き、しまくとぅばや沖縄の伝統行事の体験を通して、沖縄の文化を学んでいる。古くから子どもたちによって作られ、歌い継がれてきた「童唄」。誰でも少なからず、耳にしたことのある唄があるはずだが、時代の変化とともに途絶えつつある。そのような中、風情ある古民家で子どもたちが元気に笑い声を響かせ、沖縄文化を受け継いでいる。
 てぃーだぬ家ーで毎週土曜日に活動する「てぃーだぬふぁー童唄会」は1991年に設立された。初代の卒業生は現在30歳を超えている。普段は県内各地から子どもたちがてぃーだぬ家ーに集まって活動し、南風原町から毎週通う親子もいるほど人気になってきた。祖母や母親の世代から、ムーチーなど伝統のお菓子作りなどを子どもたちが学ぶ3世代交流も図られている。ユッカヌヒーなど沖縄の年中行事にはイベントを行い、昔ながらの手遊びなどで楽しむ。
 何と言っても沖縄の文化を受け継ぐ子どもたちの笑顔が財産である。問い合わせはてぃーだぬふぁー童唄会の宮城葉子代表(電話)090(1946)7638。

輪になって、手遊びや言葉遊び、しまくとぅばに親しんむ参加者たち=2013年7月、うるま市田場の田場ぬてぃーだぬ家

<ハワイから届いた豚>絆つないだ食糧支援

 沖縄の食文化を支える豚。戦前10万頭余りいた豚は、戦後に約7千頭まで減り、食糧難に陥っていた。1948年、その故郷の悲惨な状況を聞きつけたハワイに住むウチナーンチュが沖縄を救済するために寄付金を集め、米国本土で豚を買い、命懸けで海を渡って豚550頭を届けた歴史がある。4年後、豚は10万頭以上に増えたという。
 その豚輸送をした7人のうち4人が、現在のうるま市出身。輸送に尽力した当時の沖縄県知事志喜屋孝信も旧具志川村出身であり、陸揚げ港は旧勝連村のホワイトビーチであった。旧具志川市は養豚王国との評価もあった。
 ハワイから贈られた豚の逸話は、市内や県内の小学校の学芸会で題材として取り上げられ、高校英語教科書への採用、BEGINのコンサートの開催などのうねりとなっている。
 来年3月5日・6日にミュージカル「海から豚がやってきた」の公演予定がある。県内の養豚団体らが動き、うるま市民芸術劇場に豚のモニュメントを建設する計画も進む。豚とハワイとの深い関係は、先人が築き、今も語り継がれるうるま市の魅力の一つだ。

ハワイから沖縄に豚の輸送をした人たち
船で豚を運ぶ当時の写真

市の特産品使用 手土産の一品

勝連のモズクを使ったたれやスープ

<モズク>スープ、しょうゆ
 全国一のモズク生産地、勝連。勝連漁協は各所と連携し、もずく関連商品を開発。人気が高いのはサウスプロダクト(うるま市)と開発した「新鮮早摘みもずくたっぷり食べるスープ」(1箱10食入り、1500円)。昨年、全国517品の中から「スーパーマーケットで買いたい!フード30選2014」に選ばれた。もずくしょうゆ、ポン酢、たれは各500円。問い合わせは勝連漁協(電話)098(983)0003。

津堅島の「津堅ニンジン」を使ったサイダーやロールケーキ

<津堅ニンジン>ロール、サイダー
 甘みが強く栄養価の高い津堅ニンジンはうるま市名産品に認定されている。津堅ニンジンの風味がふんわり香る「津堅にんじんロール」(864円)は手土産にもなるスイーツだ。農業生産法人の萌芽(うるま市)が開発した「津堅にんじんサイダー」(250円)もリピーターが多い。にんじんロールの問い合わせはプティ・フール(電話)098(965)4702。サイダーは「うるまーる」(電話)098(923)2178で販売している。

「黄金イモ」を使ったお菓子

<黄金イモ>「埋蔵金」、チップス
 鮮やかな黄色が輝くうるま市特産品の「黄金イモ」。地元の菓子店「プティ・フール」が作った「うるまの埋蔵金」(1個175円)はイモのねっとりとした食感と甘みが感じられる。宮城島の「ぬちまーす」の塩も入ってミネラル分も豊富。一方、農業生産法人「みやの」からは黄金イモの収穫期にチップス(250円)が発売されている。販売・問い合わせは、うるま市特産品の店「うるまーる」(電話)098(923)2178。

人気急上昇中の「島ネロ」

<島トウガラシ>島ネロ
 最近、人気が急上昇中でうるま市特産品の店「うるまーる」もオススメする「島ネロ研究所」の「島ネロ」(860円)。島トウガラシを使った激辛のスパイスだ。県外からも注文があり、うるま市特産品の店「うるまーる」にも買いに来る人が増えているという。沖縄そばやビール、ピザなど、辛い物好きの人は何にでも入れて食べる。問い合わせは、うるまーる(電話)098(923)2178。


キャラ続々 盛り上がり

ことし誕生したうるま市まちキャラ「うるうらら」と2015年のミスうるま=2日、うるま市庁舎前

<うるうらら>
 合併して10年。「うるま」をPRするキャラクターが続々、誕生した。ことし、うるま市に待望のまちキャラが登場した。サンゴの種の妖精「うるうらら」と名付けられ、7月25日に市民にお披露目された。
 うるうらら プロフィル
 ◇誕生日 2015年3月5日
 ◇生誕地 うるま市
 ◇性格 頑張り屋
 ◇趣味 歌手活動
 ◇職業 うるま市嘱託職員

伝統神ウルマー(左端)と闘牛戦士ワイドー(右端)=2014年4月6日、うるま市与那城

<ワイドーとウルマー>
 “ヒーロー”といえば、2013年に「闘牛戦士ワイドー」と「伝統神ウルマー」が相次いで誕生した。
 ワイドーはうるま市を拠点に闘牛文化を広めるため、精力的に活動を展開している。ウルマーのオリジナルソングと踊り「ウルマーダンス」は、うるま市の子どもたちにすっかり浸透した。動画サイトYouTubeで「ウルマーダンス」を検索すると、子どもたちとウルマーが踊る動画も見られる。


闘牛「王国に」熱い視線

 闘牛王国と称されるうるま市。沖縄一を決める全島大会は市石川多目的ドームで開かれる。直径18メートルの円形の対戦場で約1トンの牛と牛がぶつかり合う。
 牛のそばでは「ヒーヤ」と鼓舞する牛主のヤグイが響く。全島大会には3千人以上の闘牛ファンが詰め掛け、熱戦に熱い視線を注ぐ。
 農村娯楽として350年以上前に始まったといわれる闘牛。明治後期の新聞には闘牛が取り上げられていた。第2次世界大戦で一時中断したが、戦後1947年に石川東恩納で復活した。
 最近は、外国人や観光客、以前は少なかった女性の闘牛ファンも増え、老若男女に愛される娯楽となっている。
 うるま市ではことし5月、全国6県の闘牛の盛んな9市町の首長らが一堂に集い、闘牛文化の在り方や継承発展を話し合う全国闘牛サミット協議会の会議も8年ぶりに開催された。