女子高生刺殺 対応検証し、再発防止を


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 「なぜ貴い命を救えなかったのか」。東京都三鷹市で高校3年の女子生徒が刺殺された事件で、警察庁の米田壮長官が会見で述べた言葉こそ、警察に問いたい。長官は警視庁に徹底した確認作業を指示したが、警察の対応が十分だったとは思えない。

 女子生徒は、殺人の疑いで逮捕された男から今年に入ってメールで「殺すぞ」と脅されていた。さらに今月1日から女子生徒の自宅周辺で男が見掛けられていた。男は自宅の京都から東京に出てきて女子生徒を待ち伏せしている。危険が間近に迫っていたと考えるのが自然だ。
 このため女子生徒は4日に高校の教頭に「家のそばまで来ていて怖い」と相談している。事態を重くみた学校側は4日に近くの杉並署に電話で状況を伝えている。署の担当者は「うちでも(女子生徒の自宅近くの)三鷹署でも相談は受けられる」としたが、相談を受けることなく、三鷹署を勧めている。電話を受けた時刻が午後5時を回っていたため「もう窓口が閉まる。土日は緊急でないと対応できない」と伝えている。被害の深刻さへの想像力を欠いた「お役所仕事」であり、大失態だ。
 7日に再び相談を受けた学校側は「すぐ警察に行くように」と勧め、女子生徒と両親は1、2校時の授業がなかった8日に三鷹署を訪れている。三鷹署はその日にストーカー規制法に基づく警告を出すために男の携帯に3度電話をかけ、留守番電話に署に連絡するよう吹き込んでいる。男に女子生徒が警察に被害を訴えていることを情報提供したようなものだ。それなのに警察は帰宅直後の生徒に電話で安否確認をしただけだ。生徒は直後に殺された。
 「殺すぞ」とのメールや自宅周辺まで来ている状況を考えれば、明らかにただちに救出しなければならない状況だったはずだ。女子生徒を相手の知らない親戚の家やホテルなどに身を隠す安全確保をすべきではなかったか。犯罪を防止する警察の使命が全うされたとは言えない。
 事件5日前には改正ストーカー規制法が全面施行されていた。付きまといに苦しむ人の保護策を進め、凶悪事件を未然に防ぐための取り締まりを強化するための改正だ。それなのに事件を防げなかったのは極めて残念だ。警察は今回の事件の対応の問題点を徹底検証し、再発防止に取り組むべきだ。