<金口木舌>災害弱者に目を向けよう


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 「逃げたくても逃げられない人の恐怖を知っていますか」。2年前、東日本大震災の被災地の取材で、県出身の医療従事者は病院患者や障がい者が「置き去りにされた」事態を訴えていた。今月に入り頻発している震度5以上の地震の報道に接するたび、東北の被災者が目に浮かぶ

▼死者のうち3分の2は60歳以上で多くの災害弱者が犠牲になった。取材の途中、岩手県釜石市で震度6弱の余震に遭った。食器棚や本棚は飛び、机の上の皿や箸が床に転げ落ちた
▼体験したことのない揺れに動揺し、机の下に隠れるなどできず、ただ机にしがみついた。いざとなると適切に身を守る行動がいかに難しいかが分かった
▼ましてや災害弱者ならなおさらだ。新潟中越地震では死者40人中、65歳以上の高齢者や子どもら災害弱者が7割以上を占めた。災害弱者にとって地域とのつながりが生死を分ける場合は少なくない
▼沖縄は大丈夫か。「お金や仕事の悩みが絶えず、家計を支えるのが精いっぱい。隣近所や地域との付き合いは薄い」。琉球新報が昨年行った県民意識調査で表れた県民像だ。地域の人々を意識するゆとりがないのが実情だ
▼「天災は忘れたころにやってくる」と言う。県外の地震を対岸の火事とせず、いま一度、周りの災害弱者に目を向ける機会にしたい。そこで標語を一考。「災害弱者 日ごろの声掛け 命綱」