<金口木舌> 冬至の日の出


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 午前6時すぎの中城城跡。暗い中を次々と人が集まるのに驚いた。その数200人超。冬至の日の出を見る恒例の「わかてだを見る集い」だ

▼城壁を背景に、白装束の女性たちが古謡クェーナを歌う姿は神秘的だ。東の空が白み始めると、人々は太平洋に向かう。手を合わせる表情が柔らかい。2度足を運んだが、自然の摂理と畏敬を感じた
▼冬至は一年で最も昼が短い日。太陽の力が弱まった後、再生、復活するとされる。古くは新年の始まりでもあった。琉球国では旧正月と並ぶ重要な日で、首里城の御庭(うなー)で荘厳な儀式が執り行われた
▼首里城や浦添グスク、斎場御嶽から見ると、冬至の朝日は久高島から昇る。久高沖のニライカナイに、太陽が生まれ出る「太陽穴(てだがあな)」があると信じられていた時代。琉球国王を太陽神の子孫とする「太(て)陽(だ)子(こ)思想」と相まって、久高島は最高聖地に位置付けられたという(安里進著「琉球の王権とグスク」)
▼冬至を重んじる文化は各地にある。北欧では冬至祭が盛んだ。本土ではゆず湯につかり、カボチャを食す。琉球では田芋を煮てお供えすると1713年の「琉球国由来記」に記されている。冬至(とぅんじー)雑炊(じゅーしー)の田芋もその名残だ
▼冬至の朝日は正月の初日の出とは趣が違い、おのずと琉球を意識する。沖縄の針路がかかる年の瀬。22日の冬至には、早起きして東の空を拝むのはいかがだろう。