<金口木舌> 飲酒運転ゼロへの心得


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 リゾートホテルの従業員らを前に、男性は意外な言葉から話し始めた。「僕のようになるなよ。頼む」。いきなり自己否定から切り出す講演は、聴く者を一気に引き付けた

 ▼講師は宮城恵輔さん(宜野湾市)。9年前、21歳の誕生日に友人と酒を飲んだ後、オートバイを運転して転倒事故を起こし、人生が一変した。運転中の記憶はない。1週間後、目覚めた時に「一つだった体が真ん中から切り裂かれていた」
 ▼一命は取り留めたが、事故の代償は大きかった。左半身まひの後遺症が残り、両腕は動かない。日常的に介護が必要になった。「事故るはずはない、という浅はかな考えしかなかった」と若い自分を責めた
 ▼一家の大黒柱だったが「その責任を果たせない」と家族を説得し、妻子と別れた。将来の夢も諦めざるを得なくなり、絶望感だけが残った
 ▼県内では飲酒事故が後を絶たない。人身事故に占める飲酒絡みの事故の割合は昨年まで24年連続全国ワーストが続いている。先ごろ発表されたことし上半期の結果からして、25年連続は逃れられそうにない
 ▼真夏の沖縄。ビーチパーティーで盛り上がり、各地の祭りもにぎわう。その分飲酒の機会は増える。「体験を語ることで飲酒事故をゼロにしたい」。宮城さんの新たな夢を後押しするためにも「飲酒運転はしない、させない」を胸に刻んでほしい。