<金口木舌>命懸けの通学路


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 最近の学校では「下校」ではなく「帰宅」と言うらしい。知人の教員から聞いた。学校を一段上に置く言葉なので避けているという。ただ「登校」は適切な言い換えがないと苦笑していた

 ▼地球上には命懸けで通学する子どもたちがいる。ケニアのジャクソン君(12)は片道15キロを妹と2人で毎日2時間かけて通う。危険動物のゾウは毎年4、5人の子の命を奪っている。丘の上からゾウの居場所を確かめ、その日のルートを決める。サバンナを小走りで駆ける姿はたくましい
 ▼桜坂劇場で上映中の記録映画「世界の果ての通学路」で知った。アンデス山脈を馬で越える11歳と6歳の兄妹。山岳地帯の22キロを友人と4時間歩くモロッコの12歳少女。インドの13歳少年は車いす生活。2人の弟が押して4キロを進む。皆ひたむきに学校へと向かう
 ▼JICA(国際協力機構)の資料によると、学校に行けない子は世界で6700万人。女子の就学率が低く、貧困や紛争などで5人に1人が学べていない
 ▼映画に登場する子どもたちは目を輝かせて将来の夢を語る。先生、パイロット、医師…。学ぶことに喜びを感じ、学校は夢をかなえる場所だと確信している
 ▼恵まれた環境にいる私たちが忘れてしまいがちな学びの大切さ。沖縄の子どもたちにそれを伝えるのは、この夏休みの大人の宿題かもしれない。