<社説>麻生氏「民度」発言 死者を侮辱するに等しい


社会
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 日本の新型コロナウイルスによる死者が欧米諸国と比べて少ないことについて、麻生太郎副総理兼財務相が4日の参院財政金融委員会で「民度のレベルが違う」と発言した。「民度」は人民の生活や文化の程度を意味する。

 新型コロナで多数の死者を出した国々は文化の程度が低いと言っているに等しく、不適切極まりない。不幸にして新型コロナに感染し亡くなった人たちに対する侮辱とも受け取れる。発言を撤回し、謝罪すべきだ。
 麻生氏は5日の閣議後記者会見で「おとしめるという話とは違う。日本がお願いだけで(抑制)できたのは誇りを持っていいという話をしただけだ」と釈明したが、それで済まされるものではない。
 参院のインターネット審議中継(録画)を確認すると、麻生氏の答弁内容はおおむね次のようなものだった。
 「人口100万人当たりの死亡者は日本が7人。フランスは228人、アメリカが824人、イギリスで309人。おまえらだけ薬を持っているのかとよく言われた。そういった質問には、おたくとうちの国とは国民の民度のレベルが違うんだといつも言ってやるとみんな絶句して黙る。それが一番簡単な答えだ。クオリティーが違うという話をよくしていた」
 質問したのは自民党の中西健治氏で、統制色が極めて薄いコロナ対応でありながら少しずつ収束を迎えてきたとして「危機に当たって自由という価値を守り続けているのは高い評価を受けるべきではないか」とただしていた。
 「みんな絶句して黙る」と言っているところから、麻生氏がこれまで複数回「おたくの国とは民度が違う」と言い放っていたことが分かる。
 言われた相手はどう受け止めたのか。親しい間柄だとしても言っていいことと悪いことがある。口論になっても不思議ではない。自身の言動の非常識さに気付かないのなら閣僚としての資質以前の問題だ。いずれ、国際的な舌禍事件を引き起こして国の体面を傷つけないか、心配になる。
 欧米諸国で爆発的な感染が見られたのは、ハグや握手といった生活習慣も大きく影響していると考えられる。民度の差と一方的に決め付けることなど、論外だ。
 麻生氏の不適切な発言は枚挙にいとまがない。少子高齢化問題に関連し「子どもを産まなかった方が問題だ」と述べたり、財務事務次官による女性記者へのセクハラを巡り「はめられ訴えられているんじゃないかとか、いろいろなご意見は世の中いっぱいある」と放言したりした。
 「ワイマール憲法はいつの間にか変わっていた。誰も気がつかない間に変わった。(ナチスの)あの手口を学んだらどうか」と発言し、国内外から批判を浴びたこともある。
 安倍晋三首相は全てを不問に付してきた。任命責任を改めて問わなければならない。