<社説>夏休み延長 子の異変と危険見逃すな


社会
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 新型コロナウイルスの爆発的感染拡大を受け、県内の小中学校でも夏休みの延長が決まり、多くは今月末までだ。長期休暇中は事故や犯罪に子どもが巻き込まれやすい。これにコロナ禍という要素も加わる。夏休み明けには子どもの自殺が増える傾向にある。

 地域社会や周囲の大人たちの見守りに、空白が生じてはならない。子どもの異変や子どもへの危険を見逃さないよう注意を払うことが重要だ。
 厚生労働省と警察庁の集計によると、全国で昨年自殺した児童生徒は前年より100人多い499人。統計のある1980年以降最多だった。
 児童生徒の自殺予防策を検討する文部科学省の有識者会議が6月に大筋了承した提言案では、昨春の一斉休校で友達や教員との交流が減り、悩みを相談しにくくなった恐れがあると分析している。
 自宅にいることが増えて家族と衝突するケースがあり、学校や家庭に居場所がなくなった可能性にも触れている。
 児童生徒の自殺は、2021年1~6月の暫定値も前年同時期より31人多い234人に上り、対策は急を要する。加藤勝信官房長官は18日の記者会見で、夏休み明けの子どもの自殺増加に触れ、不安や悩みを抱える児童生徒の早期発見に努めるよう、各学校に注意喚起していると説明した。
 国の調査研究などを担う「いのち支える自殺対策推進センター」代表理事の清水康之氏によると、20年、子どもの自殺が増えた長期休暇明けの直前にインターネットでの文言「学校 行きたくない」の検索数が上昇した。
 いじめや会員制交流サイト(SNS)の普及で周囲の目におびえたり、成績だけで評価されることに違和感があったりと、学校を脅威に感じ自殺のリスクはどの子も抱える。
 清水氏が指摘するように、全員にSOSを出す方法を伝えることが重要だ。コロナ禍が長引き、子どもたちの心身の疲弊も計り知れない。
 長期の休暇中、子どもが犯罪や事故に巻き込まれる事案も起きやすい。10日には、浦添市の牧港川で中学2年生が溺れ、亡くなる事故が起きた。全国でも水難事故が相次ぐ。
 今年1~6月に県警が薬物事犯で摘発した未成年者が25人で、20年同期(11人)の2倍を超えた。未成年の薬物事犯は全国的に増え、多くがSNSなどを入り口に犯罪に巻き込まれている。
 就学の有無にかかわらず、全ての子どもに危険や異変のあらゆる事例を教え、その脅威から心身を守る取り組みを急がなければならない。
 いじめの相談窓口や一時保護所、各地の子ども食堂など、子どもが身近に避難できたり助けを求めたりできる場所はあるが、子どもたちがそれを知らないことはあり得る。
 支援につながらなければ救えるはずの命が救えない。SNSや動画サイトなどを通じた情報発信、家庭・学校・地域との連携強化も求められる。