<社説>2023年度県予算案 脱コロナへ効果的執行を


社会
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 県の2023年度当初予算案が決定した。初の8千億円台となった前年度を7億7500万円(0.1%)上回る8613億9500万円で、3年連続で過去最高となった。

 コロナ禍が落ち着きつつある中、これまで痛手を被ってきた県民生活や経済の回復に向けて足掛かりとなる予算案だ。十分に審議され、効果的に執行することが求められる。
 保健医療部関係の新型コロナウイルス対策予算は前年度当初を上回る337億4千万円を計上した。新型コロナの感染症対策が季節性インフルエンザと同じ5類に緩められるが、防疫措置の徹底が必要だ。病床や検査体制の確保、感染者支援に引き続き取り組む。大規模事業所向けの電気料金の負担軽減など県単独の支援もする。物価高による経済や生活への影響を極力避け、観光需要を喚起する事業を遺漏なく展開してほしい。
 教員不足の要因となっている教職員の精神疾患に関する調査研究に2千万円を付けた。この問題はこれまでも指摘されており、いささか遅い対応ではある。
 教員不足問題の解決は、子どもたちが等しく学ぶ権利を守るため、待ったなしの状況だ。県の本気度が問われている。文部科学省の事業募集に手を上げた形だが、選に漏れた場合でも県単独で事業着手するべきだ。問題の背景をつまびらかにし、改善できる部分があれば年度中であっても即時に対応するべきだ。
 県人口は2022年9月末までの1年間で、統計の残る中では初の自然減となった。30年代からと推計された人口減社会の到来が早まる可能性もある。離島ではより深刻だ。離島住民向けの交通コストの軽減についても盛り込まれた。島々で人々が安心して暮らしていけるようにすることは、県民全体が取り組まなければならないテーマだ。
 歳入総額に占める自主財源の比率が40.5%となった。県税収入が2年連続で過去最高を記録していることなどが背景にあるとみられる。半面、補助金に依存した脆弱(ぜいじゃく)な歳入構造はそのままだ。行政の安定性を高めるためにも人口減に備えた戦略的な施策を全庁で検討することも必要だ。
 子どもの貧困解消に向けてもさまざまなメニューが並ぶ。知事公約に掲げた学校給食費無償化に向け、保護者の意識調査などに予算が付いた。バス通学費は支援が拡充される。
 坑道が確認されるなど、進展のある第32軍司令部壕保存・公開に関する事業も前年度を上回る予算が付いた。首里城復元に向けた予算も措置された。事業進捗に影響のないよう執行してもらいたい。
 予算案を巡る論戦が14日開会の県議会で始まる。予算にも関連し、差別的言動(ヘイトスピーチ)防止を目的とした条例案など重要な提案もある。議案の意図や狙い、効果についてしっかりと審議してもらいたい。