<社説>訓練場反対市民集会 防衛政策の矛盾露呈した


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<社説>訓練場反対市民集会 防衛政策の矛盾露呈した
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 防衛省・自衛隊が計画を進めるうるま市石川への陸上自衛隊訓練場整備に反対する市民の大きなうねりは1200人余の参加による大規模な市民集会の開催に発展した。参加者は訓練場計画の断念を求める決議文を採択した。

 うるま市議会や県議会は全会一致で計画反対の意見書を決議した。集会にはうるま市だけでなく金武町からの参加もあった。
 訓練場反対のうねりは党派の枠組みや自治体の境界を超え、県民的な広がりを見せている。平穏な暮らしが脅かされることへの危機感、地域住民の意思に関わりなく計画を進める防衛省への強い不信感の表れである。今回の事態によって「台湾有事」を名目に沖縄で軍備増強を進める政府の防衛政策の矛盾が露呈した。防衛省は計画を大幅に見直す方針だが、市民、県民の強い意思に真摯(しんし)に向き合い、計画を直ちに断念すべきだ。
 地対空・地対艦誘導弾(ミサイル)部隊の展開訓練、迫撃砲の取り扱い訓練、戦闘訓練などを想定する訓練場は住宅地と最も近いところで6メートルと近接している。市外を含めた多くの小学生が学びにやってくる県立石川青少年の家にも近い。うるま市民だけの問題ではない。市民の生活の場、県民の学びの場への訓練場建設は到底受け入れられるものではない。
 計画に対し、最初に反対の意思を表明したのは地元の旭区であり、それに東山区が続いた。集会で発言した旭区の代表は「自分たちの地域を自分たちで守る」「安心、安全で過ごせる地域づくりが必要だ」と訴えた。東山区の代表も「訓練場が造られると私たちの生活に大きく影響する」と述べた。
 住民の不安に敏感に反応した自治会長らが次々と反対を表明し、市石川出身の市議にも与野党を超えて反対が広がった。生活の場が乱される動きを許すことはできないという住民の決意が反対運動の土台となった。
 県内では過去にも自衛隊配備や施設建設に対する反対運動は起きた。しかし、今回のような党派を超えた異議申し立てで計画実行が困難となった前例はない。
 同じうるま市の陸自勝連分屯地で21日、ミサイル部隊が発足するが市民団体による反対運動が続いている。地域住民に丁寧な説明をしないまま防衛力増強を急いだとしても、地域住民の反発を招くだけだ。国策を押し出すような強引な手法は通用しない。
 訓練場整備で予定していたゴルフ場跡地の土地取得を断念した場合、防衛省は本島内で訓練場を整備できる場所を探す考えだという。しかし、本島内の限られた土地で地域住民の生活に影響を与えずに訓練場を設置することは不可能に近い。
 生活環境を守ろうと立ち上がった市民の意思は陸自訓練場ノーである。政府・防衛省はそのことを認識すべきだ。