<社説>モスクワ銃乱射テロ 卑劣な暴力は許されない


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<社説>モスクワ銃乱射テロ 卑劣な暴力は許されない
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 モスクワ郊外のコンサートホールに武装した数人が押し入り、公演前の観客らに向けて自動小銃を乱射した。ロシア連邦捜査委員会は23日、133人が死亡したと発表した。100人余が入院しており、犠牲者は増える恐れがある。

 無辜(むこ)の市民を犠牲にする卑劣なテロ行為は断じて許されない。いかなる理由があっても無差別な暴力行為は正当化できない。
 ロシアのプーチン大統領は演説で「野蛮なテロ」と強く非難した。グテレス国連事務総長や各国首脳も相次いで非難している。テロ撲滅へ向けて国際社会が連帯しなければならない。
 過激派組織「イスラム国」(IS)は、戦闘員4人が「多数のキリスト教徒を襲撃し、数百人を殺傷した」との犯行声明を出している。また米紙ニューヨーク・タイムズ電子版は、米国の安全保障当局者らが、アフガニスタンに拠点を置くIS系勢力「ISホラサン州」による犯行とみていると報じた。プーチン氏は、実行犯4人を含む11人を拘束、共犯者全員を特定し処罰すると強調した。適切な捜査を通じ全容を明らかにしてほしい。
 ISホラサン州は、2020年に米国と和平合意したイスラム主義組織タリバンを敵視しているとされる。22年にはアフガニスタンの首都カブールのロシア大使館前で起きた自爆テロで、ISホラサン州が声明で犯行を認めるなど、近年はロシアを標的にしていたとの指摘もある。
 中東の治安情勢に詳しい専門家によると「ロシアや旧ソ連圏に残存するIS勢力はプーチン政権の強権的な取り締まりに反発している」との見方を示している。テロ行為が続く可能性もあり、引き続き警戒が必要だ。
 テロ攻撃を巡っては、米国が今月、モスクワでのテロ計画の情報を入手しロシア側に伝えたという。しかし、ロシア側は事前情報を正面から受け止めなかった。
 タス通信によると、プーチン氏は19日、米からのテロ警告を「挑発的」と一蹴し、社会不安をあおる「露骨な恐喝」と非難した。今回のテロが起きたのはその3日後だ。ロシア当局が事前情報をより精査していれば、何らかの対策ができたのではないか。テロ情報に関するロシア当局の姿勢も検証が必要だ。
 一方、プーチン氏は、今回のテロの実行犯らがウクライナに越境する「窓口」が用意されていたと主張した。しかし、ウクライナ側は関与を強く否定している。
 ロシアのウクライナ侵攻から2年が経過した。プーチン氏がテロの責任を転嫁し、ロシア国内の不満をそらし、ウクライナへの攻撃を強化すれば、紛争は泥沼化するだけだ。テロの全容解明はこれからであり、第三者による客観的な調査も必要になるだろう。両国には冷静な対応と、一日も早い停戦を求めたい。