<社説>乳児死亡検証報告書 子の命守る体制弱かった


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<社説>乳児死亡検証報告書 子の命守る体制弱かった
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 那覇市内の認可外保育園で2022年、一時預かりされた生後3カ月の男児が心肺停止の状態で搬送され、死亡した事案について、市の諮問を受けた学識経験者らによる検証委員会は報告書をまとめ、認可外園と市の対応それぞれに問題点があったと認定した。

 報告書は事案の検証を基に保育施設、行政それぞれへの提言もまとめた。保育行政について多くの指摘を受けた市は体制や対応を直ちに見直す必要がある。他の市町村でも報告書が指摘する内容について検証してもらいたい。
 検証委の報告書は園が人手や資金の不足で、安全に保育ができる状況ではなかったことを浮き彫りにした。保育の方法や健康観察、職員間の連携など多岐にわたる部分で問題点が明らかになった。
 最大の問題点は園と市の双方で、子どもの命を守る体制が弱かったということであろう。不幸な出来事を繰り返してはならない。再発防止のため問題点を改めなければならない。
 今回の検証でも真相究明には至らなかった。施設長が体調不良などを理由に検証委の聞き取りに応じなかったためだ。死因も判明していない。母親は「何があったのかを知りたいとの望みは、今回の報告書を読んでも果たされなかった」とコメントした。
 市は立ち入り調査を踏まえ、園を指導していた。改善された項目もあったが、乳幼児突然死症候群(SIDS)予防のためのあおむけ寝の十分なチェック、乳幼児の睡眠中のきめ細かな観察が行われていなかった。指導の在り方にも問題があった。報告書は立ち入り調査結果について園への通知が遅かったこと、改善の確認も不十分だったとまとめた。検証委の立ち上げの遅さにも言及した。
 亡くなった乳児の保護者への市の対応も問題があった。「意見を真摯(しんし)に受け止め、適切に意思疎通を図ることが不足していた」とされた。市側も職員が足らず、業務負担が増えていたなど、考慮すべき事情があったことも分かった。ただ、子どもを亡くした保護者へのケアは最重視して行うべきであった。
 報告書は国への提言もまとめた。法令上の権限がないため十分な調査ができず、警察などからも情報が得られなかったことを踏まえ、保育施設での重大事案の検証に調査権限を持たせるよう法の見直しを求めた。保育水準を保つため、国が認可外の料金の基準を示す必要性にも触れた。再発防止の観点から法整備の議論を進める必要がある。
 認可園は増加傾向にあるが、県内ではまだまだ認可外園が待機児童の受け皿になっている。報告書は序文で「認可であろうと認可外であろうと、子どもの命や生きる権利が尊ばれる施設でなければならない」と記した。当然の指摘だ。本来は受けられる保育の質に差があってはならない。