<社説>全市町村でPFAS 原因特定と汚染除去急げ


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<社説>全市町村でPFAS 原因特定と汚染除去急げ
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 発がん性が指摘される有機フッ素化合物PFAS(PFOS、PFOA、PFHxS)について県が初めて実施した全県的な土壌調査で、PFOSとPFOAが全市町村で検出された。水質調査では嘉手納町の比謝川で国の暫定指針値(PFOS、PFOAの合計が1リットル当たり50ナノグラム)を超える130ナノグラムだった。

 県内各地で汚染が広がっている可能性がある。環境省の調べでは、全国でも沖縄を含む16都府県の河川や地下水など111地点で国の暫定指針値を超えていた。
 さらに詳しく調査し、原因特定と汚染の拡大防止・除去を急ぐ必要がある。国は自治体任せにせず、財政面も含め責任を持って対応すべきだ。
 PFASは人や動物の体内に蓄積され、発がん性のほか、出生時の体重に影響すると指摘されている。自然環境中ではほとんど分解されず「永遠の化学物質」とも呼ばれる。自然由来はあり得ない。
 米軍基地や自衛隊で使われていた泡消火剤に含まれ、これまで訓練や流出などで地下水、土壌を汚染してきた可能性が指摘されてきた。しかし今回の調査では、汚染が確認されていた基地周辺以外の市町村や離島の土壌で高い値が検出されたことから、原因究明や汚染防止に向け、より網羅的で詳しい調査が必要だ。
 汚染は全国的な広がりを見せているにもかかわらず、国の対応はずさんな上、遅すぎる。まず法令に基づく基準値がない。水質は暫定指針値にとどまり、土壌においてはそれすらもない。健康への影響についても国は「確定的な知見はない」との立場で、血中濃度などの基準値はない。指針値の策定を進めているが、及び腰のため住民の健康不安は広がる一方だ。
 米国は国内の飲み水に含まれる濃度を、PFOSとPFOA、それぞれ1リットル当たり4ナノグラムに厳格化した。両物質合計50ナノグラムとする日本の暫定指針値では、健康被害を防ぐことができるか疑問だ。
 主な汚染源と指摘されている米軍基地への立ち入り調査も実現しないままだ。これでは原因の特定と再発防止の保証はできない。2020年に米軍普天間飛行場から泡消火剤が流出した際には、水に溶けた約14万リットルの泡消火剤が川に滞留した後、市街地に飛散したが、米軍は回収しなかった。汚染拡大を放置するような対応を許してはならない。
 国の暫定指針値を上回る値を検出した比謝川で県企業局は先月、取水を始めた。ダム貯水率が過去10年間で最低レベルにあり、断水回避のための判断だ。他水源からの水との希釈や、浄水場による処理で指針値を大きく下回ると説明しているが、本来あってはならない。比謝川の汚染は米軍由来の疑いが強い。日米で原因を究明すべきだ。
 国民の命が懸かっている。国は自身の責任で健康被害調査を早急に実施し、有効な対策を講じるべきだ。