<社説>土地規制区域指定終了 違憲の法律反対し続ける


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<社説>土地規制区域指定終了 違憲の法律反対し続ける
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 土地利用規制法による区域指定が終了した。2021年3月に同法の概要が初めて報道され、6月に国会で成立して、ここまでわずか3年だ。沖縄では米軍施設17カ所と自衛隊、海上保安庁、離島の合計70カ所が指定された。広大な米軍基地と同居させられ、自衛隊の拡張が続く沖縄では、治安維持法や軍機保護法の再来になりかねない危険な法律が生活圏を覆う。何重にも憲法に抵触する土地規制法にあくまでも反対する。

 この法律は、安全保障上重要とする土地について政府が調査し、利用を規制するというものだ。施設の周辺約1キロを「注視区域」とし、さらに司令部など、より重要度の高い施設の場合は「特別注視区域」に指定する。
 「注視区域」では、政府は不動産登記簿や住民基本台帳などの情報を収集し、土地の利用実態や所有者の個人情報を調べられる。「施設の機能を阻害する」と判断されれば、土地の利用中止を命じることができ、罰則もある。「特別注視区域」はこれに加えて、一定面積以上の土地の売買に氏名、国籍、利用目的の事前届け出が義務づけられる。司令部を持つ米軍や自衛隊基地などの周辺が「特別注視区域」に指定された。
 これは私権の制限であり、地域経済にマイナスになるのは明らかだ。政府が土地の利用実態を調査することはプライバシー侵害であり、思想や行動の監視につながる。しかも「施設の機能を阻害する」の定義は22年9月に決まった基本方針でもあいまいで、恣意(しい)的な運用を防げない。これらは当初から強く批判されてきたが何も変わらなかった。
 手続きも乱暴だった。当該自治体への聞き取りは行われたものの、疑問点への説明はなく、住民への説明会も実施しなかった。「安全保障のために人権の制限はやむを得ない」という考えは危険だ。
 米軍基地などの区域指定は今月中に官報に掲載され、来月施行される。北谷町と嘉手納町は、米軍基地を除く全ての区域が「特別注視区域」に含まれる。北谷町議会は法律の即時撤廃などを求める意見書を賛成多数で可決した。意見書案を提出した議員は「町内のみならず県内の投資にも影響し、雇用への負の影響も危惧される」と述べている。
 普天間飛行場などがある宜野湾市も、大半が「特別注視区域」になるとみられている。市民有志が宜野湾市の担当職員と意見交換した際に「機能阻害行為が分かりづらい」「調査で思想、信条などのプライバシーが守られるのか」などの声が出された。
 こんな危険な法律の先に何があるだろうか。日米開戦を背景に1941年に「宮沢・レーン事件」が起きた。北海道大学の学生と米国人英語教師夫妻が、軍機保護法違反の嫌疑をかけられた冤罪(えんざい)事件である。再び暗黒時代を招いてはならない。土地利用規制法は廃止すべきである。