<社説>宮古島の大規模停電 原因究明と対応策確立を


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<社説>宮古島の大規模停電 原因究明と対応策確立を
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 宮古島市で25日、市内のほぼ全域にわたる停電が発生した。昼前の復旧まで8時間半を要し、市民生活に大きな影響を及ぼした。沖縄電力は、発電機から送電線につながる「母線」の不具合が原因と説明したが、不具合が起きた理由は判明していない。究明を急いでほしい。

 今回の大規模、長時間停電は自然災害によるものではなく、平時に発生した。未然の防止策と停電発生時の対応が問われている。
 25日の午前3時ごろに発生し、最大時で市内ほぼ全域の約2万5500戸が停電した。午前11時42分に復旧したが、県立高が午前は臨時休校となった。小中学校では蛍光灯がつかない中で授業をし、給食の調理ができないため、午後には下校となった。
 役所や病院は非常用電源に切り替え業務を継続したが、病院は午前の外来を休診したり、運転免許センターが一部業務を見合わせたりした。電力復旧後に開店したスーパーマーケットもあった。
 昨年の11月にも沖縄本島内の21市町村で最大11万8800戸の停電があった。原因は火力発電所の発電設備の不具合だった。これによって電気の使用量と発電量のバランスが崩れたため、電力システム全体を保護する系統安定化装置が緊急的に送電を遮断したことによって本島各地での停電につながった。
 この事案については、定期点検で異常は確認されていなかったという。不具合のあった機器を取り換えて対応したとの発表があった。この経験は、今回の宮古島市での停電で生かされただろうか。
 沖電は自然災害への対応策を確立しているはずだ。進路が予想できる台風の場合、復旧作業まで想定した人員配置などの事前準備が可能である。豊富な経験に基づき、沖電はノウハウを積み上げてきている。台風時は住民も心の準備ができているだろう。
 平時における想定外の停電に対しても備えが必要である。基本は機器の保守管理を含め、日常業務の中で停電を未然に防ぐことだ。
 昨年11月の本島での大規模停電の背景には機器の「経年による誤差」が生じたことがあった。電力の安定供給には、機器の老朽化の確認や計画的な更新が不可欠だ。
 仮に停電が起きた場合は、その原因の特定や不具合が発生した場所の確認を急がなければならない。今回の宮古島のケースはどうだったのか、しっかり検証してほしい。
 夏場の停電であれば、短時間であっても空調が使えないために熱中症を引き起こす恐れもあり、場合によっては命に関わることも考えられる。離島県では、他の発送電網との融通がかなわない。長期化すれば、影響はより深刻なものとなる。
 原因究明は沖電の調査を待つことになるが、行政も積極的に関与して、再発防止や備えを徹底してもらいたい。