<社説>大浦湾工事8月本格化 着工見送り協議を続けよ


<社説>大浦湾工事8月本格化 着工見送り協議を続けよ
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 政府の強行姿勢は一層鮮明となった。沖縄の言い分を聞く必要はないと考えるならば、到底許されない。

 米軍普天間飛行場の返還に伴う辺野古新基地建設に向け、沖縄防衛局は8月1日から大浦湾側の護岸工事に着手すると県に通知した。大浦湾の埋め立てが本格的に始まることになる。

 県との代執行訴訟に勝訴した政府は今年1月、大浦湾側にある軟弱地盤の改良作業を始めたばかりだ。5月には大浦湾側に生息するサンゴ類約8万4千群体の移植作業に着手している。

 政府は矢継ぎ早に大浦湾での作業を進めることで沖縄側を追い込み、新基地反対運動を沈静化させるつもりなのだろう。県議選投開票から2日後の通知も、選挙結果にかかわらず新基地建設を進めるという意思の表れであろう。

 林芳正官房長官は県議選翌日の記者会見で「地元への丁寧な説明を行う。辺野古移設が唯一の解決策との方針に基づき、着実に工事を進めることが危険性除去につながる」との従来の姿勢を強調した。

 しかし、これまでの政府の姿勢は「丁寧」とはほど遠く忍従を強いるものだ。工事に関する「事前協議」に関する防衛局の対応はその一つだ。

 仲井真弘多元知事による2013年の埋め立て承認の際に付した留意事項として、実施設計に基づく環境保全や環境監視調査、事後調査などについて県と協議することを政府に求めている。

 今回の大浦湾側護岸工事について、県と防衛局は4回にわたる質疑と回答を重ねてきた。その上で防衛局は協議は調ったとの認識を示し、8月1日の工事着手を通知してきた。県は協議は継続中との認識だが、防衛局はそのまま工事に入る可能性がある。

 「事前協議」は過去にも県と防衛局の間で火だねとなってきた。15年、協議が調わないまま防衛局は辺野古の護岸工事に着手している。今年1月の大浦湾側のヤード設置工事では県が協議を申し入れたものの、防衛局は「ヤードは協議の対象外」と主張し、工事に着手した。

 このような問答無用の姿勢で大浦湾側の護岸工事に着手することは許されない。協議は終わっていないと県が認識している以上、8月1日の着工は見送るべきである。

 政府の強行姿勢が一層あらわになる中で、新たな対抗策が県に求められている。国と県との法廷闘争は県敗訴が続き、現時点で新基地を止めるための手段を玉城デニー県政は提示できていない。

 県議選で新基地賛成、反対の議員数は同数になった。新基地問題で政府と対決する玉城県政に対する野党の追及は厳しいものとなろう。県議選の結果について玉城知事は「辺野古反対の民意は弱まっていない」と述べた。その民意を結集するための「新たな一手」が待たれていることを忘れてはならない。