<社説>宜野湾市長選告示 基地問題の解決手法問う


<社説>宜野湾市長選告示 基地問題の解決手法問う
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 現職市長の死去に伴い急きょ実施されることとなった宜野湾市長選が、きょう1日に告示される。投開票は8日。市政の最重要課題である米軍普天間飛行場返還問題の解決手法が問われ、選挙結果は国政や県政にも影響する。

 2期目の途中で亡くなった松川正則氏の後任を決める市長選に向けて、いずれも無所属で、元職の佐喜真淳氏(60)、新人で市議の桃原功氏(65)、新人で会社代表の比嘉隆氏(47)の3氏が立候補を表明してきた。

 このうち、主要政党が支援する佐喜真氏と桃原氏による事実上の一騎打ちが見込まれる。自民、公明が推薦する佐喜真氏が保守・中道市政の継続を掲げるのに対し、玉城県政与党の「オール沖縄」勢力が擁立する桃原氏が市政奪取を目指すという構図だ。

 玉城県政与党が半数を割り込むこととなった6月の県議選直後の市長選として県内政局の行方を占う選挙となる。「政治とカネ」「政治と宗教」を巡り高まった有権者の政治不信の影響を見る上でも注目され、年内の可能性が取りざたされる衆院選の前哨戦にも位置付けられよう。

 最大の争点は基地問題だ。宜野湾市は市街地のど真ん中に普天間飛行場を抱える。基地から派生する事件・事故や騒音の被害に市民生活がさらされ、まちづくりの大きな弊害にもなっている。

 普天間飛行場の早期返還では一致するものの、日米両政府が返還条件とする辺野古移設の是非を巡り、佐喜真氏は「容認」、桃原氏は「反対」と両者の姿勢は異なる。

 佐喜真氏は国と協調した取り組みを重視した松川市政の路線継承を掲げ、普天間返還後の跡地開発に向けて「対立や分断ではなく次のステージに進もう」と呼び掛ける。

 桃原氏は県内移設を条件にした返還合意から28年が経過していることに触れ、辺野古移設は「『唯一の解決策』ではなく普天間基地が動かない原因」と転換を促す。

 課題は基地問題だけではない。宜野湾市は沖縄コンベンションセンターを中心に西海岸側に観光や商業施設が集積し、西普天間住宅地区跡地では琉球大病院・医学部の移転など開発が進む。大学があって若い世代も多く、発展可能性が大きい地域だ。

 市街化が進む中で、子育て・教育の充実や医療・福祉の確保など、幅広い市民サービスの需要に応え、住民満足度を高めていくかじ取りが市長に求められる。裏付けとなる財源の根拠など行財政改革の手法は大事なテーマだ。

 慢性的な渋滞が生じる市内の交通事情改善や災害時の対策、市民の不安が高まるPFAS問題など、安心・安全に関する施策への関心も高い。

 気掛かりなのは投票率だ。6月の県議選で宜野湾市区の投票率は44.65%と県全体よりも低かった。候補者は積極的に政策を競い、有権者の関心を高めてもらいたい。