<社説>’24年衆院選 外交・安保 沖縄への影響を明確に


<社説>’24年衆院選 外交・安保 沖縄への影響を明確に
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 今回の衆院選は外交・安全保障のあり方が大きな焦点となっている。世界的に国家間の分断・対立が深まる中で、戦争の惨禍を避けるために日本はどのような対応や役割を果たすべきなのか、各党の外交ビジョンが問われる。

 石破茂首相が提唱した「アジア版NATO(北大西洋条約機構)構想」や日米地位協定の改定が重要な論点に浮上しているほか、中国との向き合い方や防衛増税、核兵器禁止条約への参加の是非などが政党間の争点となる。

 特に南西諸島は基地増強や軍事演習の激化など直接的な負担が増している。過重な基地負担の軽減に逆行しているばかりでなく、紛争に巻き込まれるリスクの高まりなど外交・安保政策次第で県民生活に深刻な影響が及ぶ。

 各党は沖縄への影響や負担をどう考えているのかを明確に語らなければならない。

 日米両政府は中国の軍拡や海洋進出に対抗するため、米軍と自衛隊の一体化を進め、南西諸島へのミサイル配備など抑止力・対処力向上を図ってきた。岸田文雄前首相は5年間で計約43兆円を投じて防衛力を抜本的に強化する方針を決めた。

 この国防強化路線を今後も進めていくのかどうか衆院選の争点となる。財源確保のための増税など国民負担の議論も避けて通れない。

 自民党は政権公約で「日米同盟の抑止力・対処力を強化」すると明記し、岸田政権で閣議決定した安保関連3文書に基づく防衛力の強化を踏襲する立場を示している。

 石破首相が党総裁選で公約としたアジア版NATO構想は、衆院選の政権公約に記載はない。首相が持論を後退させたとすれば、政策の実現能力などに疑問符が付く。一方で、石破氏がアジア版NATOを提唱する狙いなど国民への説明も不十分だ。

 石破首相はアジア版NATOを創設した上で、「核の共有や持ち込み」について具体的に検討すべきだとの主張を米国の保守系シンクタンクに寄稿していた。非核三原則に抵触するほか、NATOのような全面的な集団的自衛権行使は憲法違反となる。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)には中国を刺激する恐れがあるなど慎重論が強く、外交上の懸案になりかねない。石破首相は公約に盛り込まなかったことが「変節」でないというのであれば、何を企図しているのか選挙で国民に説明すべきだ。

 安保3文書は敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を認めるなど日本の安保政策を大転換するものだったが、国会審議を経ることはなかった。

 立憲民主党は公約で防衛増税に反対し、野田佳彦代表は集団的自衛権の行使を容認した安全保障関連法の再検討に言及した。だが共産党は野田氏の安保政策を巡る姿勢を批判し、野党共闘は崩れた。

 平和と安全をどの候補者に託すか、政策を見極めたい。