<社説>桑江沖縄市長再選 市の均衡ある発展実現を


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 沖縄市長選は「観光も福祉も経済も前に進める」と訴えた現職の桑江朝千夫氏=自民、公明、維新推薦=が再選を果たした。

 市民が桑江氏の4年間の実績を評価した結果である。桑江氏は市の均衡ある発展などの公約を実現し、市勢をさらに発展させてほしい。
 争点の一つとなった1万人規模の多目的アリーナ建設は、桑江氏が前回選挙から目玉公約に掲げていた。2017年度に実施設計を終え、18年度中に着工、20年度供用開始の予定である。23年のバスケットボールのワールドカップ(W杯)1次予選開催会場に決まっている。
 桑江氏が大型公約を着実に前進させたことで、その手腕に期待した市民は多いだろう。「1万人規模のアリーナ建設で、にぎわいの場を創出し、新しいまちづくりを始める」との訴えも、市民に夢を与えたはずである。
 無所属新人で前市議の諸見里宏美氏=社民、共産、社大、自由、民進、希望推薦=は、多目的アリーナの必要性を検証するとした。だが「市民が求めているのはハコモノではない」とも訴えていたことで、支持が広がらなかった可能性がある。
 市が16年に公表した多目的アリーナの全体計画では、本体工事や駐車場整備などを合わせた概算総事業費は約170億円である。桑江氏は「国から9割補助がおおむね認められた」と説明している。
 計画公表から2年がたち、事業費が膨らむことが予想される。市の負担は1割にしても、かなりの額に上るだろう。市民に丁寧に説明し、理解を得ることを引き続き求めたい。
 全体計画によると、供用開始後の単年度の経済波及効果は133億7200万円を見込んでいる。1万人規模の多目的アリーナを「ヒト・モノ・カネ」を呼び込む「経済の成長エンジン」にしなければならない。桑江氏は多目的アリーナを最大限活用し、成果を上げる責任がある。経済波及効果の試算を、絵に描いた餅にしてはならない。
 多目的アリーナに対する国の高率補助適用は、米軍牧港補給地区(キャンプ・キンザー)倉庫群の移設を嘉手納弾薬庫知花地区に受け入れることが条件だった。キャンプ瑞慶覧のスクールバス関連施設も同地区に移設される。従業員約千人とスクールバス約80台の移転で交通量が増え、渋滞悪化が懸念される。
 移設を受け入れた桑江氏は、地域住民の生活環境を守る責任があることを改めて認識してほしい。地域住民の要望に沿って目に見える改善を図ることに全力で取り組んでもらいたい。
 桑江氏は「子育てしやすいまちづくり」「健康長寿のまちづくり」など、市民生活に密接に関わる政策も打ち出した。公約実現は市民との約束であることを胸に2期目に臨んでほしい。