<社説>知事選きょう告示 沖縄の針路が決まる


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この記事を書いた人 琉球新報社

 県知事選は13日に告示され、30日に投開票される。沖縄の針路を決める今年最大の政治決戦だ。有権者は立候補者の公約を十分に吟味し、大切な1票を投じてほしい。

 選挙戦は前宜野湾市長・佐喜真淳氏(54)と衆院議員・玉城デニー氏(58)による事実上の一騎打ちとなる。
 翁長雄志知事の死去という不測の事態を受けて行われる今知事選は過去に例のない超短期決戦だ。佐喜真氏は8月14日に、玉城氏は同29日にそれぞれ出馬を正式表明し、前哨戦を展開してきた。
 自民、公明、維新、希望の各党が佐喜真氏を推薦した。玉城氏は政党の推薦を受けない方針だ。安倍政権を中心とする勢力と県政与党を中心とする勢力が激しく対決する構図になっている。
 佐喜真氏は「県民の暮らし最優先」を掲げ、全国平均並みの県民所得300万円の実現や子どもの保育費、給食費、医療費の無償化、跡地利用の推進などを打ち出した。
 玉城氏は「新時代沖縄」を提唱し、各国との交流を促進する万国津梁会議の設置、中・高校生のバス通学無料化、「観光・環境協力税」の導入などを打ち出した。
 日米地位協定は、同じように米軍が駐留するドイツやイタリアに比べると著しく不利な内容だ。両氏とも協定の改定を求める姿勢を示した。
 米軍普天間飛行場の移設に伴う新基地建設が名護市辺野古で進む中、建設に反対する県が、前知事による埋め立て承認を8月31日に撤回したばかりだ。新基地建設の是非が最大の争点になる。
 佐喜真氏は「政府と対等な立場で、一日も早い普天間飛行場の返還を実現する」と述べ、新基地建設の是非については触れない方針だ。
 玉城氏は「普天間の閉鎖・返還を政府に要求する。辺野古に新たな基地は造らせない」と述べ、阻止するためあらゆる権限を行使する構えだ。
 誰が知事になるにせよ、就任してすぐに、新基地への判断を迫られる。各候補者は、有権者が抱くあらゆる疑問に真摯(しんし)に答え、正々堂々と選挙戦に臨んでほしい。
 次期知事は、屋良朝苗、平良幸市、西銘順治、大田昌秀、稲嶺恵一、仲井真弘多、翁長雄志の各氏に続く第8代の知事だ。1972年に日本に復帰してから13回目の知事選となる。
 戦後27年間、米軍施政下にあった沖縄では68年に主席選挙が実施されるまで、全住民の代表を直接選ぶ権利さえ認められなかった。主席公選の実現は自治権の拡大を求める沖縄住民が勝ち取った成果の一つといえる。
 沖縄以上に選挙の大切さを身にしみて知っている地域はなかっただろう。
 あれから50年。選挙権年齢が18歳以上に引き下げられてから初の県知事選だ。ぜひ投票所に足を運んでほしい。若い人たちにとっては選挙の意義を学ぶ絶好の機会だ。