日米防衛協力指針 改定に合理的理由あるか


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 日米両政府は自衛隊と米軍の連携の在り方を定めた日米防衛協力指針(ガイドライン)の再改定作業に向け議論を開始する。1978年に策定された同指針の改定は、実現すれば97年に次いで2度目だ。

 軍備増強や海洋進出を続ける中国への対処など、日本周辺の安全保障環境が急速に変化したことを目的に挙げるが、これ以上の強化が本当に必要なのか。森本敏防衛相は8月の日米防衛相会談後の会見で「どういう目的で何を見直すかは、これから詰める」と発言しており、改定する目的をこれから探すというのだから、あきれるほかない。
 政府内には自衛隊の海外活動拡大に対応するためとの思惑があるようだ。現行指針には自衛隊による米軍支援を日本領域に限定する地理的制約がある。これを領域外でもできるよう見直し、周辺事態法の改正も視野に入れる。
 さらに自衛隊の米軍基地の共同使用や日米演習の在り方も議論され、柱は沖縄・南西諸島などの警戒監視活動を強化する「動的防衛協力」だという。現行の指針は朝鮮半島有事を想定したものだが「見直しは、特定の地域における事態を議論して行ったものではない」と断っている。今回の改定は対中国を鮮明にしており、不必要な摩擦を生まないか危惧する。
 今月初めに沖縄で実施された自衛隊と在日米軍の共同統合演習では当初、無人島の入砂島での離島奪還訓練が予定されていた。実施は見送られたが、こうした動きは中国を刺激しただろう。
 改定の議論は2006年5月にもあった。額賀福志郎防衛庁長官が日米安全保障協議委員会(2プラス2)の場で見直しを提起したが、米側の反応はなかった。在日米大使館の安全保障部長も「大切なことは合意したことの実行だ」と述べ、米側として必要性がないとの見解を示していた。
 それが6年後になって改定が必要と日米が一致する理由は何か。オバマ米大統領が昨年11月、中国を念頭に打ち出したアジア太平洋重視戦略と無縁ではないだろう。しかし、米側の動きに呼応して防衛協力を強化するよりも、尖閣問題を平和的に解決し、持続可能な対中国外交を確立するのが先決ではないか。
 隣国を敵視した軍事戦略強化の動きには違和感を覚える。政府は国民的議論もないまま、改定を既成事実化してはならない。