米将校の住居侵入 基地を限りなくゼロに


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 組織としての指揮命令系統が破綻しているということだろう。2万数千人の米兵を狭い沖縄に居座らせ続けることには無理がある。
 在沖米兵による事件が後を絶たない中、今度は指導的立場にある将校が捕まった。事は重大である。米軍の再発防止策、綱紀粛正には一片の信頼も置けない。

 那覇市の中心部で18日朝、在沖海兵隊キャンプ瑞慶覧所属の24歳の中尉が住居侵入の疑いで逮捕された。
 容疑者は前日の午後8時半ごろから翌日の午前6時半ごろまで3軒の飲食店で実に14時間も酒を飲み、泥酔状態で住宅に侵入した。
 朝早く、玄関をくぐった見ず知らずの酒臭い若い米兵に向き合った被害者宅の女性は、強い恐怖を覚えたことだろう。重大な性犯罪につながりかねない危険な事件だ。
 米海軍兵による集団女性暴行致傷事件後、「かつてない再発防止策」(森本敏防衛相)として鳴り物入りで繰り出された在日米軍全兵士の深夜外出禁止令(午後11時~翌日午前6時)はもはや意味をなさない。
 肝心の沖縄で、外出禁止時刻より早く基地外に出て一晩中酒を飲み、禁止令解除後の早朝に事件を起こす将校がいるようでは、何をかいわんやだ。
 基地外に住んでいる兵士は野放し状態に近く、基地内居住の兵士が点呼されるわけでもない。とても実効性は担保できまい。
 在沖米軍トップの四軍調整官が在沖海兵隊の兵士に講話するなど、各軍とも所属兵の深夜外出を厳しく禁じた。容疑者も綱紀粛正を率先すべき軍幹部だ。
 外出禁止破りを伴う米空軍兵による住居侵入中学生傷害事件から2週間余しかたっていない。在沖米軍内の規律の緩みの深刻さと、県民の怒りが米兵らに十分共有されていないことの表れだ。
 米軍と県民の摩擦は強まり、米兵事件の根絶に向け恒久的外出禁止を掲げたり、在沖米軍基地の撤去に言及する首長や議員が増えている。
 「2万数千人の兵士が沖縄にいて、ばかなことをしでかすやつをゼロにするのは無理だ」。米国防総省の幹部が嘆くのを聞いたことがあるが、無責任な響きに映る。
 沖縄に米兵が駐留し続ける限り、事件は続発する。その被害はもう甘受できない。米兵と基地を大幅に削減し、ゼロに近づけることしか有効な再発防止策はなかろう。