民主党政権公約 現実に目を背け現実主義か


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 「コンクリートから人へ」を華々しく掲げ、3年3カ月前に政権交代を成し遂げた民主党は、沖縄の基地施策に関しては別の党に変節したと指摘せざるを得ない。

 民主党の政権公約は、最大懸案の米軍普天間飛行場の返還・移設問題をめぐり、「在日米軍再編の日米合意を推進する」とした文言で、名護市辺野古移設を推進する姿勢を示した。
 さらに、2009年の前回衆院選、10年の参院選で掲げた「日米地位協定の改定の提起」が姿を消し、「運用改善」に努力する姿勢を掲げ、大幅に後退した。
 前回衆院選挙で事実上の公約だった県外移設をかなぐり捨て、民主党政権は県内移設に回帰した。野田佳彦首相は「沖縄の皆さまにおわびをしなければならない事態の教訓、反省を踏まえる」として、「外交、安全保障政策は現実的に進める」と述べている。
 沖縄の現実から目を背けることが現実主義なのか。沖縄からみれば、辺野古移設は非現実的だ。この教訓を直視すべきだ
 対米従属にとらわれた外務・防衛官僚に操られる政治の弱体ぶりは、基地の過重負担感の根にある日米地位協定改定が公約から消えたことにもくっきり表れている。
 「現実的」という文言にはあるべき姿を模索することを放棄する響きがある。「現実的」の名の下に、沖縄に基地を押し付ける「差別的構造」を温存するならば、取り繕った謝罪は要らない。
 一方、沖縄振興に関し「沖縄への補助金は自由度の高い一括交付金に原則切り替える」と明記した。
 県や市町村が中央省庁に縛られずに、離島県の特性を踏まえて県民生活向上に直結する施策を展開する上で歓迎すべき公約だが、基地問題との取引だけは禁物だ。
 政権公約は総じて抽象的だ。2030年の原発稼働ゼロに関し、「必ず実現する」と明記したのが目を引いた程度で、かつての数値目標や工程表は影を潜めた。「目指す」「取り組む」「すすめる」など、実現度を後で検証されても釈明できる予防線を張ったため、迫力が乏しい。
 象徴的なのは、環太平洋連携協定(TPP)の記述だろう。交渉参加方針を掲げる野田首相は、衆院選の争点化も強調してきたが、公約は「政府が判断する」として党方針を示していない。閣僚を含めた党内反対派に配慮するあまり、分かりにくさが増している。