「いじめ」教員評価 隠蔽体質からの脱却急務


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 文部科学省は、いじめの未然防止や早期発見ができたり、問題を隠さず適切に対応した教員や学校をプラス評価するよう、各都道県教育委員会などに通知した。
 いじめ対応を、教員や学校を評価する基準に加えた通知は初めてであり、後を絶たないいじめに正面から向き合う姿勢を明確に示すものとして評価したい。

 大津市の中2男子自殺を受けて文科省が実施した緊急調査では、今年4~9月の半年間に全国の小中高校などが把握したいじめは14万4054件に上り、約7万件だった2011年度の2倍を超えた。
 各地でいじめの掘り起こしが進む一方、いじめの割合は都道府県間で最大約160倍の差が生じるなど、地域の取り組みに大きな違いがあることも鮮明になっていた。
 実態把握に消極的な地域が多いのは、いじめが多いと保護者などから批判にさらされるためだ。通知は、大津市教委で顕在化した隠蔽(いんぺい)体質からの脱脚を全国の教委に促す狙いもあるとみられる。
 通知では、アンケートや面談で定期的に児童生徒から状況を聞く取り組みをさらに進めるよう要請した。とりわけ、いじめに悩み苦しむ子どもたちの「声なき声」に耳を澄まし、丁寧に拾い上げる作業に心を砕いてほしい。
 最前線に立つ教職員には、何よりも人権感覚を研ぎ澄ますことが求められる。「いじられキャラ」など子どもへの安易なレッテル貼りで、いじめの兆候やSOSが見過ごさることはあってはならない。軽微ないじめだと放置することなく、小さな芽を早い段階で摘み取る地道な努力が、悲劇を未然に防ぐ手だてとなる。
 子どもたち個々の尊厳を守り抜く姿勢を明確に示すことで初めて、子どもたちからの確固たる信頼が得られることを肝に銘じたい。
 もちろん、いじめ対応は個々の教員や学校任せではなく、保護者や地域住民をはじめ関係機関との連携が不可欠だ。スクールカウンセラーや専門家らの積極的な活用など教育現場の支援体制を整備することも急務だ。
 いじめは陰惨な事件をきっかけに社会問題化するが、時の流れとともに忘れ去られる「負のサイクル」が繰り返されてきた。いじめはいつの時代にもさまざまな形で存在する。当然の事実をあらためて社会の共通認識とすることを、いじめ根絶の第一歩としたい。